黒猫亭舊館
黒猫亭主人謹製藏書録・贅言他
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2009.01.18(Dim)00:01  空襲でこどもを殺された父親の嘆き
 イゼル=ディン・アブル・エシュ Izz el-Deen Aboul Aish (Le Monde の綴りは Ezzedine Abou Eich)はイスラエルの人々によく知られたパレスチナ人産婦人科医である。ヘブライ語に堪能な彼は、イスラエルのテレビにおいて、たびたびコメントを求められてきたからだ。
 1/16の夜の10チャンネルの番組でも、イスラエル人ジャーナリストのシュロミ・エルダール Shlomi Eldar が、携帯電話で彼に連絡をとった。だが、電話に出た彼は、取り乱すばかりであった。
 「神よ、わたしたちが彼らになにをしたといふのか?」
 「わたしの娘たちを、彼らは殺した、あゝ神よ、彼らは娘たちを殺したのだ、アラーよ……」
 彼の家は、ガザ北部のベイト・ラヒヤ(Beit Lahiya)にあったが、そこが空襲 raid [レド] にあったのだ。『ル・モンド』によると、3人の娘と1人の姪が亡くなったといふ。
 「だれか現場に来られるひとはゐないか……」
 エルダールは場所を聞きだすと、「この電話を切ることはできない。ちょっとスタジオの外に出たい」と云った。同じくショックを受けた風の司会者はこれを認め、彼は、アブル・エシュと携帯を持って席を外すことになる。
 イスラエル政府が、一方的停戦を決めるのは、一日後、1/17夜のことである。

イラン在住ジャーナリストのデルフィーヌ・ミヌイ Delphine Minoui のブログ。
http://blog.lefigaro.fr/iran/2009/01/tele-israelienne-le-cri-de-des.html

 翌日、アブル・エシュの緊急記者会見が開かれた。
 「わたしは知りたい、どうして娘たちが殺されたのか? だれが発射の命令をくだしたのか?」
 「わたしはイスラエル軍に家の住所を知らせてゐた」
 「娘たちはカナダでの将来――アブル・エシュはカナダに職を得てゐたらしい――を計画してゐるところだった」

 この場に、イスラエル軍に3名のこどもがゐるてふ母親―― Levana Stern てふ名前らしい――が乗り込み、「プロパガンダ」をやめさせようとした。彼女は、イスラエル軍の公式発表――反撃しただけだと云ってゐる――どほり、医師の家には武器が隠されてゐたのだと主張、あなたがたは恥を知れと主張したといふ。その後、彼女は、彼のこどもに起こったことを思ふと心が痛むと述べたが、一方で、傷ついたイスラエル兵がゐる病院で、彼に演説の場をあたへたイスラエル人たちのことが理解できないとも云ってゐる。

 問題は簡単だ。こんなことが生ずるのは、戦争するからではないか。

(映ってゐるのがシュロミ・エルダール。英語字幕付き)
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2009.01.17(Sam)00:00  14年目
 昨年書いたことをふたたび想ひ出す。
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2009.01.15(Jeu)07:04  藝術にみる金髪
アート系研究者の学際的研究グループ Gradiva [グラディーヴァ]。
今回のテーマは « LES HOMMES PRÉFÈRENT LES BLONDES »: Représentations de la blondeur dans les arts(「紳士は金髪がお好き」:アートの中のブロンド表現)。ラクロの『危険な関係』とか。しかし、ナボコフの『ロリータ』は、原文では「栗色」なのに、映画や本の表紙では、かならず金髪にされるらしいが、ほんまかいな。

http://gradiva.over-blog.org/


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2009.01.11(Dim)02:27  ガザの惨状
10日には、大阪、東京でも、そしてフランス各地では大規模なガザ攻撃反対デモが行なはれた。

在仏ブロガー猫屋寅八さん訳の、ガザのひとびとの声を伝へる『ル・モンド』の記事。
http://neshiki.typepad.jp/nekoyanagi/2009/01/post-3839.html

「メディアが隠してゐる虐殺の現実」てふ、Youtube の動画。死傷した子どもたちの姿が痛ましい。



見ると憂鬱になること必定だが、知らんぷりをするわけにはゆかないのだ。
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2009.01.08(Jeu)06:28  Junko KAWAKAMI, It's Your World (Kana)
It's Your World 昨年9月のフランス研修引率時に、セルジーのフナックで購入した新刊。かつて紹介したやつが、やうやくまとまったらしい。いづれ日本語訳も出るやうだが、そもそも日本語でネームを書いてるらしく――擬音語の書き文字も日本語のまゝだったり――、フランス語版がオリジナルなのに、右綴じになってゐる。
 かわかみじゅんこには少ない――西目丸名義のBLは別だが――、男子主人公モノ。父親の転勤にともなってパリ――サクレ・クール寺院の近くっぽいので、18区の下町ならん――に引っ越した厨房スズキ・ヒロヤ――「鈴木広也」と書くやうだ――くんの悩める日々を描く。なにしろ、初手から「友だちができるだらうか」と心配してゐたのだが、フランス語力――授業はちんぷんかんぷん――の問題と、「文化」の違ひから、案の定孤立してしまふ。女子からのビズにビックラこいたり、みんな H を発音せず「イロヤ」と呼ぶもんだから、じぶんが呼ばれてる気がしないとこぼしたり。
 そんな彼に最初から積極的に話しかけ、フランス語の家庭教師まで買って出てくれたのが、同級生のぽっちゃり女子ファティマ Fatima。11人の兄弟をもち、musulmane のやうだ。いっぱうでヒロヤは、初日にあったバンビのやうな別嬪さんのゾエ Zoé に惹かれ、彼女もヒロヤのことを意識してゐるふうをみせる。それぞれに悩みも抱へるふたりの女子のあひだで――隣に住む何でも屋の兄ちゃんたちに「二兎を追ってる」courir deux lièvres à la fois と冷やかされながらも――とまどひつゝ、ヒロヤは成長してゆく(ハズ)。そして、友人たちに、日本式の「初日の出」見物にさそひ、早朝から出張ったものゝ、ご来光は8時過ぎだったてふのは、高緯度地域ならではのオチ。
 なほ、ヒロヤとは正反対の積極的・外向的女子高生のお姉ちゃんルミ――Lumi と綴られる。お母さん曰く lumière [リュミエール](光)から名付けたらしい――がゐるのだが、彼女はどんな日常を送ってゐるのか気になる。ちなみに、かわかみじゅんこのインタヴュー記事――写真付き――が Manga News でみられる。いちぶは自らフランス語で返答したさうで。

http://www.manga-news.com/index.php/auteur/KAWAKAMI-Junko

 ところで、フランス語版の Wikipédia 他では、この作品が『パリパリ伝説』(2004)の仏訳にされてるのがをかしい。最初のニュース・ソースが間違ってたのであらうが、どこでどう間違ったものか……。
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2009.01.07(Mer)03:21  かわかみじゅんこ『軽薄と水色』(宙出版)、『みどり姫』(祥伝社)、『100%オレンジピンク』(宙出版)
軽薄と水色みどり姫 (Feelコミックス)100%オレンジピンク もう一年も前に、陸続と出されたかわかみじゅんこの漫画集。いづれも旧作がほとんどで、近作は『軽薄と水色』のなかの「バイバイラジオスター」「すこやかなのぞみ」――いづれも豊島ミホ原作――と、『みどり姫』所収の「パジャマで海へ」ぐらゐである。前二作は、かわかみじゅんこの定番であるアドレッサンスが主人公であるが、後者は妊婦さんが主人公だ。もちろん、テイストは変はらないのだが、妊娠・出産を経験した作者ならではかも。


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2009.01.07(Mer)03:51  年越しの自動車燃やし
 なにかあると自動車が放火されるフランスである。政府へのプロテストといっちゃ放火、社会への憤懣といっちゃ放火、お祭りといっちゃ放火なのだ。
 てなわけで、仏内務省の発表によれば、今年の年越しのお祝ひ――12月31日は「聖シルヴェストロ」、すなはち Saint-Sylvestre [サン・シルヴェストル] の日なので、これを la (fête de) Saint-Sylvestre と呼ぶ――には、フランス全土で1147台が燃やされたらしい。ちなみに、パリ市内は12台、ヴァル・ドワーズ県で68台、セーヌ・サン・ドニ県では130台ださうである。Rue 89 [リュー・カトル・ヴァン・ヌフ] てふニュース・サイト――お色気欄は Rue 69 てふ名前だ!――に詳細な地図と、経年炎上台数のグラフが載ってゐる。

http://www.rue89.com/2009/01/03/voitures-brulees-un-record-2009-en-trompe-loeil

昨年の3割り増し、2005-2006年の年越しのときの倍ださうだ。だが、昨年の年間炎上数は36700台で、一昨年より6千台減ってゐるので、サン・シルヴェストルの炎上数だけをみて、世情の乱れが増してゐるとは云へない。Rue 89 の記事の見出しにある「目くらまし」とは、さういふ意味である。
 
 ちなみに、Rue 89 の「オフィシャルパートナー」を掲げた日本版サイトがあって、セレクトした記事を翻訳してゐるのだが、誤訳だらけのうへ、そもそも日本語になってなくて、正直いただけない。ぜんたい、だれが訳してゐるのかしらん??
http://www.rue89japon.com/
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2009.01.04(Dim)17:40  Quarante-cinq ans
P1020492.jpg 800×600 60K 今年も仕事中であった。結構テンパってます。あゝ、〆切り……。

(惜夕日[せきじつヲをしむ])
  • ま・ここっと (2009/01/06 01:45)
    お誕生日おめでとうございまする。
  • 黒猫亭主人 (2009/01/07 03:46)
    ありあとでござんす。ちなみに、小生の予定日は Saint-Sylvestre だったさうで、正月三が日をお休みさせてあげたってわけですな。(^_-)
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2009.01.03(Sam)05:31  帰省
P1020465.jpg 600×800 145K 二年ぶりに帰省したら、実家の壁が青くなってゐた。
  • ひよ (2009/01/09 10:33)
    あけましておめでとうございます&お誕生日おめでとうございます!青い壁、すごいっすね。。
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2009.01.01(Jeu)17:39  碧也ぴんく『非常ノヒト』3, 鬼外カルテ其ノ拾四(新書館 WINGS COMICS)
非常ノヒト 3―鬼外カルテ其ノ14 (3) (WINGS COMICS)

非常ノヒト 3―鬼外カルテ其ノ14 (3) (WINGS COMICS) 生前のさまざまの想ひのけっか、永遠に世界をただよふ存在となった「虚空の人々」を描く「鬼外カルテ」シリーズ、15年目にして、遂に完結。最後のシリーズは、福内鬼外、すなはち平賀源内そのひとの生涯を描く。伝へられる彼の最期は、人を殺めて投獄されの獄死てふもので、早坂暁の名作NHKドラマ『天下御免』の大ファンであった小生にはショッキングなものであるが、遺体は返却されなかったてふ点、謎の最期ではある。
 漫画の方は、秋田藩士・小田野直武――『解体新書』の図を描いた――との交情がメインとなってゐる。じつは、源内の事件に前後して国元へ戻された彼は、源内のあとを追ふやうにして亡くなってゐるのだ。漫画は、鬼外先生がカルテの最後に記す彼自身の物語を書かうとするところで終はる。それは源内と直武の新たな物語にほかならないであらう。

 ちなみに、

嗟非常人(あゝ、非常の人)
好非常事(非常の事を好み)
行是非常(行なひ、これ非常)
何死非常(なんぞ非常に死するや)

とは、杉田玄白が書いた源内の墓碑である。
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2009.01.01(Jeu)00:21  Bonne Année !
 昨年は必死の冬休み、地獄の春休みとあって、GPやったり(5月)、ハル大学の近松プロジェクトやったり(5月)、教育学会のシンポやったり(5月)、セルジー・ポントワーズの語学研修引率やったり(9月)、合間にちょこっと芝居に嚙んだり(3月と6月)、論文書いたり(10〜11月)、L-1やったり(12月)、書評書いたり(3本)、日仏文化協会や近鉄文化サロンで話したり(3、7、8月)、学内で戦ったりしました(負けた)。
 今年は、とりあへず教科書つくったり久々の連載とかがあるやうですが、椅子やフローリングの床にころがって寝る生活を改善して、寝床をなんとかしたいと思ひます。本年もご贔屓に。
  • makkom (2009/01/01 18:57)
    そうですね、まずは寝床から、ですね。ことわざにある様に。今年もよろしくお願いいたします。
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