黒猫亭舊館
黒猫亭主人謹製藏書録・贅言他
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2006.02.28(Mar)07:44  海堂尊『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)
チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光 第4回の「このミス」大賞受賞作。独立行政法人化した地方国大医学部附属病院に招聘された天才外科医のバチスタ手術に、連続して術中死が発生。病院長の依頼で調査をすることになったのは、不定愁訴外来、別名「愚痴外来」担当の窓際講師・田口公平。前半は彼の聞き取り調査がメイン。だが、本当の「探偵」は、後半に登場する厚生労働省技官・白鳥圭輔――彼には部下もゐて、シリーズ化前提みたいな設定になってゐる――といふ構造。そして事件解決後も、マスコミ対策などの後日譚が第3部として描かれる。
 現役の医師である作者がくりだす医療現場ネタはたしかに面白いが、それ以外の面については、巻末に付された「このミス」選評で持ち上げられてゐるほどのものではない。書き慣れてゐないのだらうが、文体に淫する派のぼくとしては、もう少し文章に意を用ゐてほしかった。
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2006.02.27(Lun)02:32  古屋兎丸『ハピネス』(小学館 IKKI COMIX)
ハピネス

ハピネス 2001年から2006年の間に発表された短篇8本をまとめたもの。表題作の「ハピネス」は、月刊コミック誌『IKKI』に掲載のシリーズ名でもあり、「ハピネス」以下3篇を含む。
 著者があとがき――カヴァーをめくると現はれるぞ――でいふとほり、「中高生」の「喪失感」をテーマにした作品群であり、主人公はおほむね女子である。だが、基本的に「バカ」の作品群と云へよう。中高生時代の「信じる力」は、後に思へば「バカ」以外のなにものでもないからだ。畢竟、「バカ」とは「純粋」の代名詞にほかならない。
 それゆゑ、ストレートな作品がほとんどであるが、ちょっとひねった冒頭作「嬲られ踏まれそしてさくのは激情の花」(2001)と、巻末作で「りずむ」てふ子の原作漫画をリメイクした「アングラ★ドール」(2006)が秀逸。作品ごとに描線も変へてゐるてふ兎丸であるが、「アングラ★ドール」では細めの主線になってゐて、これが同時期連載作『π』でつちかった太主線の「雲のへや」との印象に差を付けてゐる。そして、「アングラ★ドール」のみが、「バカ」と「バカ」の切ないオハナシである点も、本書中一番の感慨を齎す要因であると小生は思ふ。
 なほ、「アングラ★ドール」に出てくる男は、つげ義春のキャラ風。
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2006.02.26(Dim)01:51  2次前期日程
 2/25は所謂「国公立入試2次試験前期日程」であった。毎年なにかしらの仕事が割り当てられるのであるが、今年は、試験監督と試験問題搬送警備の二本立て。搬送警備とは、試験会場まで入試問題が運搬される車に同乗する仕事である。かつては大学職員の運転手さんの車であったが、今回は職員および経費の削減のせゐか、民間委託されてタクシーになってゐた。この運転手さんが話し好きで、55歳でこの世界に這入って7年目だの、このやうな指定よりも流しで色々なお客さん乗せる方が面白いだの、最初の頃は報道機関担当だったがありゃ大変だだの、色々話してくださるうち、道も空いてゐたので、大変短時間で会場に到着。待機してゐた係長らに驚かれた。
 文学部の2次前期日程会場は、随分前から難波の大阪予備校。ぼく自身も、こゝで受験してゐるのだが、この会場、18歳人口の減少と、大手予備校の進出によって、激しい定員割れをおこしてをり、今年度一杯で廃校となる。つまり、文学部の2次前期会場の歴史も、これが最後なのだ。さらば、大予備。
(試験後の大予備。前にゐるのは、恒例のアメフト応援隊と他予備校のチラシまきバイト)
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2006.02.26(Dim)01:07  あさりよしとお『荒野の蒸気娘』1(ワニブックス)
荒野の蒸気娘 (1)

荒野の蒸気娘 (1) 「おとうさん」や「ワッハマン」の系譜に連らなる「無表情でトンチンカンなことする無敵かつ純粋なキャラ」を描かせたら天下一品のあさりよしとお、今回は「設定上」は健気な美少女の蒸気ロボットを持ってきた。しかも「妹属性」。ごつい姿態で可愛らしく「おにいちゃん」と呼ぶさまはハガレンを想はしめるが、そこはあさりテイスト、アホらしさ満開である。一方、これまたボケ・キャラに共通の「隠された影」も既に垣間見られたが、はたしてどんな展開となるのであらうか。
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2006.02.26(Dim)00:53  CLAMP『xxx HOLiC』8(講談社)
XXXHOLiC 8

XXXHOLiC 8 (8) 「貴方は貴方だけのものじゃないのよ」って、えゝこと云ふがな侑子はん! しかし、四月一日くん、モテモテやな。
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2006.02.24(Ven)06:58  お絵かき印象バトン
砂規さんから10日ほど前にいただいたバトン。

●回してくれた方の絵の印象

線の少ない、シャープなおしゃれ系ですな。今風とも。耽美を志向/嗜好してるやうでもあり。でも、最初に見た絵は、本人が腹痛で凹んでるイラストだったやうな。

●周りから自分のイラストにもたれる(と思われる)印象 5つ述べてください。

1. わけわからん
2. デッサンをかしい
3. 女の子が出てくる
4. 男の子も出てくる
5. をっさんも出てくる

●自分の好きな絵柄 5つ述べてください。

代はりに好きなイラストレータさんたちを順不同に。

1. 林明子(初期の絵も最近の絵も贔屓でさ)
2. 山田章博(レトロめかしたのも、漫画も贔屓でさ)
3. 山本タカト(お耽美。エロいのも贔屓でさ)
4. 宇野亜喜良(憧れの線画。筆絵も贔屓でさ)
5. 内田善美(繊細緻密。漫画も贔屓でさ。てふか、漫画家)
シンプルな描線とフラットな塗りが好みのやうですな。

●では反対に苦手な絵柄

所謂アキバ系。なんぢゃ、ありゃ。

●自分が描きたい、描けるようになりたいと思う理想の絵柄、スタイル

迷ひなき描線とデッサン力。
あとはもっと個性を。

●自分のイラストを好いてくれる人に叫んでください。

めるすぃーっっ!
なんか描いたろかーっっ?

●そんな大好きな人にバトンタッチ15名(絵の印象つき)

15名?
そもそもそんなに見られてへんで、こゝ。
高校の同級生アザラ師、大学の同級生クラッシャー・ヒデ、仏文の先輩で消息不明のミッツーさん、劇団のアイドルT、引退→結婚のゆ〜こさん。え、見てない? しゃあないなあ。ほな、誰でも、見てる方、どうぞ。
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2006.02.24(Ven)05:20  最終講義
100_0550.jpg 600×800 73K 退任する先生方が、セレモニアルにおこなふ講義。年度末の年中行事でもあるが、チャンスがあれば是非出席すべし。他学部の先生のでも、縁あらば勿論。こんなにオモロイもんはない。小生もさまざまの最終講義に出席してきた。文字どほりその年度の講義の最終回としておやりの先生もゐれば、大学では専門の関係で一度としてできなかった内容をおやりになった先生もいらっしゃる。でも、なんといふても興味深いのは、自分が、如何にして学問の道を志したかを語ってくださる部分である。小生も、20年の後に無事最終講義をおこなへたら、是非とも這般の消息を語って、これまでの諸先達に倣ひたいとおもってゐる。尤も、今年度最終講義をなさったお二方は、いづれも学に志すのところをお話しになられず、大層残念であったが。
 さて、今週頭、20日は、小西嘉幸先生の最終講義と退任記念パーティであった。前日まで芝居モードであった小生、朝からパーティ参加者用の名札を作る(ちなみに、100セットの名札は私物)。午後から院生諸君とともに会場設営。最終講義中は、受付に張り付いて、遅れてくる人への対応。先週の哲学Y先生の最終講義は60分であったのにたいし、小西先生は120分を語りきってなほ足らずてふ状況であった。
 祝宴は小生の司会。70名弱の参加は、酒好き小西先生の人徳のしからしむるところか。卒業生、来賓、同期着任の先生、いづれも愉快なスピーチを戴いたのも亦。
 二次会は、仏文関係者ばかり、杉本の「紀月」2階へ。H大のK先生やK学院のK先生のゲストはもちろん、先輩同輩後輩も、まことに久々のメンツばかり。
 さらに、どう見てもへべれけのK大N先生に率ゐられて、津川先生やSさんらと三次会へ。1時帰宅は早かったといふべきか。
(写真は、紀月)
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2006.02.23(Jeu)22:28  西原理恵子『毎日かあさん 2――お入学編――』(毎日新聞社)
毎日かあさん2――お入学編

毎日かあさん2 お入学編 すでに1年近く前の刊行なので、描かれてゐる内容は一昨年のことか。「毎日新聞」で週刊連載、Web では隔週で読める。賢妹愚兄。いつものとほり。キャリア・ウーマンのお母さんのエピソードが琴線に触れた。
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2006.02.20(Lun)01:19  公演終了
100_0423.JPG 800×600 58K 野外でテント建てゝやるときは、おほよ10日(浪花グランドロマンは短い方)だが、劇場でやるときは、仕込み、初日、楽日と、3日コースが殆んどであらう。始まったと思ったら、もう終了。野外と小屋とのこの差は、じつは想像するより大きい。
 このアリス零番舘の物品には、旧阪急ファイブにあった劇場「オレンジルーム」のネーム入りのものが多いが、これは、現在のアリスのスタッフで、かつてのオレンジのスタッフであったWさんが持ち込んだもの。本日は、その旧オレンジHEPと販促室長を勤められたFさんがご来場になり、小生に、じぶんフランスもの書きいやと云はれる。そんなFさんに「オレンジ」のネームを示すと、「剥がせよな」とか云ひつゝも嬉しさうであった。
 久々の裏方専従で、気は楽であったが、個人チケットは売れず。やはり、役者か作者で噛まねばならんことが分明になったが、いかんせん、暇がないのであった。

(上手袖中。赤く光ってゐるのは、100均のLEDライトで、目印代はり。写真左が舞台、右が楽屋)
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2006.02.18(Sam)23:54  不審尋問
 無事に初日のあいた本日夜23時、吾輩がアトリエにペンキを降ろし、ブルーシートを積んで帰宅しようとしたゐたところへ、コツコツと窓を叩く者がゐる。見ればバイクに乗った巡査氏か巡査部長氏が、一寸脇へ寄ってくれとのご要望である。何でも、長時間に渡り行ったり来たりしてゐる不審な車ありとの通報があってご来訪になったらしい。それはどう考へても吾輩に非ずと思ふうへに、民間の通報じたいが怪しいと思ったが、警官君は「疑ふのが商売ですから」と、決め台詞で押し通す。勿論、疑はれて心地の良い人間はゐないといふもう一方の文句は忘れたまゝである。
 職務質問は任意のはずであるが、痛くもない腹を探られるのにも閉口させられるので素直に応ずると、警官君は吾輩の車の中を開けよと云ふ。吾輩に後暗い点は寸毫も存在せぬので鷹揚に構へてゐたが、何ぶん、吾輩の恰好は本番の舞台監督のまゝの黒づくめ。車内に収納されてゐるのは、ノコギリ、テープ、テント建て用の地下足袋、安全靴 ブルーシート。嘗て吾輩の車を覗いた事務のMさんは「先生の車、怪しいもんばっかりですね」と云ったものだが、慥かに泥棒陰士たるの資格充分に相違ない。当然ながら吾輩は、芝居をやってゐて、アトリエがそこにある旨申告したが、警官君は疑念を払拭する能はぬ態で、吾輩に免許提示を要求した。結局、免許照会と自動車の登録者照会の結果、放免となったのであるが、日本の治安は斯様にして維持されてゐるやうで、大変頼もしい。後で気付いたのだが、まだ残りある芝居のチラシを渡すべきであった。残念である。
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2006.02.17(Ven)07:02  仕込み
 本日はこれより浪花グランドロマンの仕込みで、長堀橋のアリス零番館へ。こゝは、新宿のタイニイアリスてふ、文字どほりタイニイな小屋の姉妹劇場で、両館のオーナーは元園田女子大の西村博子先生である。小生、離風霊船の「ゴジラ」を初見したのは、飛び込みで這入ったタイニイアリスにてであった。これはオモロイと感心してゐたら、その後、その「ゴジラ」で岸田戯曲賞を受賞、メジャー劇団になってしまった。
 今回、小生は裏方のみ。そのせゐか、じつは、ノルマ制なのに、チケット一枚も売れてない。どうせだから、小生のチケット、欲しい方にはプレゼントさせていただく。もっとも、本番は明日、明後日なのだが。
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2006.02.10(Ven)06:59  べつやくれい『日常茶飯語 プチおさらい』(小学館)
日常茶飯語―プチおさらい

日常茶飯語―プチおさらい 下の白猫――「しろぞう」てふ名前――と、髪の長い女子が再登板。今回は「日常茶飯語」と呼ばれる成句表現の間違ひがネタに。たとへば「額に( )する」には三つの選択肢で、「飾り――インドの女性がビンディをつけること、肉――寝ている人のおでこに「肉」などとラクガキすること、汗――一生懸命働くこと」とあり、頁の下に正解が書かれてゐるてな具合。
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2006.02.10(Ven)06:35  べつやくれい『しろねこくん』(小学館)
しろねこくん

しろねこくん ことばあそび風絵本。たとへば冒頭、「ねこがあたる」「ねこにあたる」「ねことあたる」てな具合に、助詞の変化が三つ続き、三つ目がオチになってゐる。そして、ヘッドの部分は、本全体すべて「ねこ」。絵の方は、ゆらゆら描線のゆるい風味。
 ちなみに、女子美出身の著者の本名は別役怜、あの別役実と楠侑子の娘である。父親は高校時代に絵を習ってゐて、サインと共にイラスト入れたりしてたが、血は争へないてふべきか。現在、@Niftyデイリー・ポータルZの特集「ロマンの木曜日」を担当中。
 なほ、表紙のカヴァーをめくるとおまけが。
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2006.02.08(Mer)08:18  ミシェル・ジンマーマン、マリ=クレール・ジンマーマン『カタルーニャの歴史と文化』(白水社 文庫クセジュ)
カタルーニャの歴史と文化

カタルーニャの歴史と文化 スペインシュルレアリスムの画家 Joan Miró は「ホアン・ミロ」ではなく「ジュアン・ミロ」と書かれる。これは、彼がバルセロナの出身であり、そのバルセロナを州都とするカタルーニャ自治州の公用語がカタルーニャ語(現在の共通スペイン語はカスティーリャ語。いづれもロマンス系言語)で、その発音にしたがふからである。ミロの他、ダリやガウディなどでも知られるカタルーニャは、かつて、地中海沿岸各所に所領を有する一大王国であった。それがいつの間にやらスペインの一部とされてゐるわけで、もちろん、カタルーニャ民族主義者による独立運動も存在する。とまれ、豊かな歴史と文化をもつカタルーニャを忘れてはなるまい。
 ちなみに、カタルーニャ地方に属するフランスのペルピニャン(Perpignan。カタルーニャ語ではペルピニャ)周辺ではカタルーニャ語が話されてゐるといふが、おそらく、現在では、ご老人にしか通用しないと思はれる。
 また、仏西国境のピレネー山脈間に位置するアンドラ公国(スペインのウルヘル司教とフランス共和国大統領を共同元首とする)の公用語は、カタルーニャ語である。
 訳者の田澤耕は、法政大学教授のカタルーニャ学者。
  • ま・ここっと (2006/02/08 17:09)
    こんにちは。カタルーニャ語ですが現在もFrance 3メディテラネで毎週土曜日にカタルーニャ語放送(確かVaquiというタイトルです)が流れており、字幕つきで軽快な音を楽しめます。
    私ごとですが、夫の母方の祖母がPied noir(Oran出身)で幼少期はカタルーニャ語で育っています。先祖がスペインから入植しており、歴史の流れでフランス共和国民になったパターンのようです。余談ですが今ではマグレブ菓子として知られるモンテカオも元々はスペインからの入植者が持ち込んだ調理法だそうです。
  • 黒猫亭主人 (2006/02/09 09:38)
    これはこれは、ここっつぁま!
    France 3 Mediterranee にありましたか。ご教示深謝です。
    てふことは、ペルピニャンでもまだまだ現役てふことでせうか。それとも「聴解はできるが、会話には使はない」ってことなんでせうかね。
    そして、ご亭主のおばあさまは Catalane でいらっしゃる。それは身近に語るーニャ。Montecao なんて、名前からしてイスパニア風ですもんね。でも、cao とはなんぞや?
    さらに、アルジェリアについては、金沢大学の粕谷さんがたいさうお詳しいです。ここっつぁまはご存じかしらん?

    まとめリンク
    フランス3メディテラネ:http://www.mediterranee.france3.fr/
    カタルーニャ語ラジオ:http://www.catradio.com
    粕谷さん:http://blog.goo.ne.jp/raidaisuki
  • ま・ここっと (2006/02/17 17:56)
    祖母の旧姓はPlaで、これもカタルーニャ典型の苗字らしいです。
    近年、ブルトン語、プロヴァンス語、カタルーニャ語、バスク語など退化させないために、公立校でも選択できるようになっているらしいです。ちなみに町境界の看板は我が地元では仏蘭西語とプロヴァンス語の表記になっています。
    モンテカオはこんなお菓子です。
    http://perso.wanadoo.fr/tchatcheuses/recettes/montecao.htm
    元々Pied noir がマグレブに移住後も家庭で作り続けたお菓子で、今ではマグレブアラブ菓子としても知られるようになったようです。アラブ系のお菓子屋さんで必ず買えますが、食後感で油が違うように思います。アラブ系の方が腹持ちがいいですね。
    毎週土曜日のフランス3の番組ですが100%カタルーニャ語のみで字幕で楽しむ形です。一般の方も多数出演しますが、日常会話も自然ですよ。
    同じFrance3の「メディタレーネオ」というこの番組↓も面白いのでぜひ。クリックするだけでビデオもご覧になれます。
    http://www.mediterranee.france3.fr/emissions/mediterraneo/emissions/2005/

    粕谷先生のURL、ありがとうございました。
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2006.02.07(Mar)00:22  河野哲也『エコロジカルな心の哲学――ギブソンの実在論から』(勁草書房・双書エニグマ1)
エコロジカルな心の哲学――ギブソンの実在論から

エコロジカルな心の哲学―ギブソンの実在論から G.G.ギブソンは、「エコロジカル心理学」――「生態学的心理学」と訳されてゐる――と「アフォーダンス」で有名である。第二次世界大戦中、戦闘機乗りが、如何にしてランディングするかを研究してゐたギブソンは、飛行士の奥行き知覚が、離着陸する地べたとの「関係性」によって成立してゐることに思ひ到った。それを発展させ、知覚主体をとりまく「環境」のうちに、当該の知覚を導く「アフォーダンス」の存在を指摘するに到る。
 本書は、ギブソニアン(?)哲学者が、それを「自我」など「心の哲学」について適用したものである。まさに「構築主義的」(反認知主義的)心理学だ。けれど、アフォーダンスが環境裡に「実在する」てふとき、彼の理論は些かあやふい。ギブソン紹介では遙か先達の佐々木正人もさうだが、「アフォーダンス」を「主体外の環境に存在する何らかの実体」とすると、とたんに間違ひになる。
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2006.02.05(Dim)07:51  読書バトン
mixi の みやこ嬢から回されたので。

■今家にある本の総量は?

たぶん3000冊くらゐ?
くはへて、学校に3000冊くらゐ?
書籍は今後もどんどん増えるであらうが、すでに人生の折り返し地点を過ぎたと思はれる小生、読み切ることができるのであらうか??


■今読んでいる本は?

矢沢あいの Nana 仏語版。トイレのたびに読むトイレ本なので、なかなか進みまへん。
それと嶽本野ばら『シシリエンヌ』
さらに、小坂井敏晶『民族という虚構』。ホッケー少年から世界放浪の末に、パリ第8大学の社会心理学者となった著者が、「民族」を既定のもとと看做す文化本質主義を撃つ。計量的アンケートが如何にキハモノかてなことも指摘してゐるので、人間行動学系のヒトはそこだけでも読んでみては如何か?


■一番最近買った本は?
黒田硫黄『茄子』の仏語版ですな。


■自分に衝撃を与えた本を5冊以内でどうぞ。
それはもう仰山おますが、人生の各段階ごとで選んでみますと、

(1) 夏目漱石『吾輩は猫である』(岩波書店)
 小学生のときにハマリ、文体・かなづかひ・ペンネーム等に影響をあたへた作品。
 内容は、云ふもさらなる有名作。でも、せんだって授業で読んだことある人と手を挙げさせたら、殆んど読んでないことが分明に。学生諸君に告ぐ、乙一とかハリポタなんか読まんでえゝから、『吾猫』くらゐ読んでください、頼みますからm(_ _)m。

(2) 安部公房『密会』(新潮社)
 中学生のときにハマリ、ペンネームと奇妙な味への嗜好に影響を与へた作品。
 安部公房的には晩年作にあたり、円熟・手練れの作風に。でも、中2のとき、深夜に一人、これを読んでゐて、云ひやうのない戦慄を覚えたのは忘れられない。ちなみに、小生、その後安部作品にハマったが、主たる作品を読んだ後には、『燃えつきた地図』『第四間氷期』『石の眼』あたりが贔屓で、『密会』は『箱男』の次くらゐ。

(3) 結城信一『空の細道』(河出書房新社)
 高校生のときにハマリ、一時、小生に「老人叙情小説」を書かせた作品。
 第三の新人に数へられつゝ、その後、「死と少女への畏怖と憧憬」てふ独自の路線をあゆみ、マイナー・ポエットとなる。殊に、若い頃から隣にゐた「死」は、老年期にはひるに到り、万人の共感を得るやうになったのが、川端文学賞の受賞に繋がったか。ちなみに、小生、結城信一は、この「空の細道」の短篇連作が『文藝』に連載されてゐるときに知ったてふ、たいへん後発の愛読者である。詩人・荒川洋治が推してゐたことも読書のきっかけだったかも。なほ、後に、荒川は、文庫版の解説を書くことになる。

(4) 別役実『そよそよ族の叛乱』(三一書房)
 大学生のときにハマリ、「オハナシ」性と「さみしいユーモア」を醸し出す文体を考へさせた作品。
 別役作品としては初期作になるだらう(1971年初演)。この「失語症の一族」については、『黒い郵便船』、『そよそよ族伝説』シリーズへと展開されることになる。別役は、『さみしいおさかな』のなかでも「さみしい」ことについて触れてをり、この戯曲中では、「大きいこと」=「さみしい」と述べてゐる。この「さみしさ」への感受性は、別役劇に通底する基調音であるが、それが端的に示された作品ではなからうか。ちなみに、小生、生涯の野望のひとつは、別役の「諸国を遍歴する二人の騎士の物語」を上演すること。

(5) ロマン・ガリ『白い犬』(角川文庫)
 大学院生のときにハマリ、「不機嫌の時代」てふ文学研究を思ひつかせた作品。
 「自由フランス軍」の勇者にして、ド・ゴールの友人、戦後は外交官としてロサンジェルス総領事などを歴任、あのジーン・セバーグと結婚し、自作の主演女優とし、監督までした Romain Gary。後に偽名でゴンクール賞を受賞、死語――自殺であった――それを明らかにしたガリ。舞台は1968年、黒人公民権運動の盛り上がるアメリカと、五月革命のフランス。妻であるセバーグは反差別運動に熱心であったが、運動に参加するのは高潔な人物ばかりではなかった。いづれの側も斬らざるを得なかったガリの孤独や如何に。なほ、彼の死は、元妻のセバーグが謎の死を遂げてから――FBIによる他殺説あり――一年後のことであった。

(6) 大沢在昌『感傷の街角』(ケイブンシャ文庫)
 非常勤時代にハマリ、以後、ハードボイルド文体に淫する癖をつけた作品。
 後に「新宿鮫」シリーズで一躍人気作家となる大沢在昌のデビュー作。ハードボイルドの基本である「大人の渋さ」に、若干23歳の大沢が「若者の青さ」で対抗を試み、みごと新境地を切り開いた作品。なほ、主人公・佐久間公は、順調に歳を重ね、『雪蛍』で再登場。『心では重すぎる』では、「青さ」はすっかり影をひそめ、「小言オヤヂ」と化したが、それはそれで素晴らしい。
あ、6つになってもた。


■バトン渡す5名。
仏文の同僚4先生に。見てへんやろけど。
あと、コトミさんかな?
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2006.02.01(Mer)23:24  シキシマ・パン
 やるべきことの多さに、つい逃避してしまふのだが、こちらがおなじみ、「パスコ」の Gaspard et Lisa [ガスパール・エ・リザ]――来年度、第2部のフランス語での教材にする予定――のCMソングである。ちなみに、ガスパールとリザ(日本での表記は「リサ」で、順番も「リサとガスパール」だが)は、けだもののやうに見えて、じつはけだものではない。クリソツの犬のぬひぐるみをプレゼントにもらったりしつゝも、彼らは犬などではないのである。あたしゃ、かつて長いこと犬だと思ってたので驚いたのであったが、それを上回る衝撃は、「パスコ」の正体が「敷島製パン」なことであった。しかも、東日本では、もうせんから Pasco (PAin Shikishima COmpany) であったらしい。
 で、上の歌詞だが、もちろん lumiére は lumière の間違ひである。マイナス0.5。
  • パン党 (2006/02/02 21:47)
    パリに沢山あるパン屋のチェーンPAULを日本で出店してるのもPascoなんですね。もちろん、サンドイッチの大きさや値段は日本サイズ&価格になってしまってるけど。
    現地PAULの(ハムとチーズしかはさまっていないのにやたらと美味しい)sandwich parisienが食べたい…と思い焦がれつつも、この春は「超熟」でポイント貯めて、Pascoの弁当箱をもらう気満々です。
  • 黒猫亭主人 (2006/02/04 13:44)
    おや、paul もシキシマパンですか。
    そして、たしかに、フランスのサンドは美味しいですな。てふか、バゲットが美味しいんですよね。朝、近所のパン屋さんで焼きたてのバゲットを買って、帰るまでに端っこを囓ってしまふほどでした。しかも、滞仏時代は、家の前にチーズ屋さんもあったので、幾度も食べたもんです、sandwich au fromage。
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2006.02.01(Mer)19:38  修論・卒論試問
 本日は、先月提出された修士論文・卒業論文の soutenance (口頭試問)であった。今年は、修論2本、卒論4本、朝の10時に開始して、途中昼休みをとりつゝも、最後の点数出しまで7時間。学生さんも先生方もお疲れさんである。
 そして今年も、興味深い論文の数々、今後の人生において論文を書くことなぞないかもしれぬ彼女ら――今年は女性ばかりなのだ――にとっても、なにがしかの糧とならんことを。
 そこで、小説「美しい町」に記した佐藤春夫に倣ひて、

 一生の大道といふところにはあらぬ小径のなつかしきかな(与謝野晶子)
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2006.02.01(Mer)19:22  Iô KURODA, La Bataille du mont Fuji : Et autres aubergines (Casterman)
La Bataille du mont Fuji : Et autres aubergines

 多く講談社系の大人向け漫画の仏訳を出してゐるカステルマンの、その名も「作家」Sakka シリーズから、小生贔屓の黒田硫黄の『茄子』全3巻。かのアニメにもなった「アンダルシアの夏」は第1巻所収だ。左の第3巻のタイトルは「富士山の戦い:と、他の茄子たち」。
 ちなみに、茄子の仏語 aubergine [オーベルジーヌ] は、アラビア語からカタロニア語経由で借用された語らしい。
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2006.02.01(Mer)19:13  杉万俊夫編『コミュニティのグループ・ダイナミックス』(京都大学学術出版会)
コミュニティのグループ・ダイナミックス

コミュニティのグループ・ダイナミックス 「グループ・ダイナミックス」とは、人間を集団レヴェルで捉へ、その動態を研究するもの。かつては「集団力学」とか訳されてゐたが、「グループ」にはその人々の環境(コンテクスト)も含まれる。ぼくが目下取り組む構築主義的コミュニケーション論のための勉強用。
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2006.02.01(Mer)18:51  篠沢秀夫『フランス文学精読ゼミ――ランボーからサルトル、カミュまで――』(白水社)
フランス文学精読ゼミ

フランス文学精読ゼミ 学習院大学名誉教授となった篠沢先生――かつて学習院で仏文学会があったをりに見かけたが、船長さんみたいな御衣裳でござった――が、文学作品を、その文章・文法に拘って解釈してみせる篠沢節満開の一書。前半は、ランボーの Une saison en enfer――『地獄の季節』。篠沢訳では『地獄での一季節』―― を、鈴木信太郎・小林秀雄の二大巨頭訳を引き合ひに出しつゝ、自らの読みを示してゆき、後半は、いろいろな作家のさまざまな文章をあれこれと読み解いてみせる。
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2006.02.01(Mer)18:39  福井憲彦・稲葉宏爾『フランス』1ロワール流域から北へ(山川出版社)
フランス〈1〉ロワール流域から北へ

フランス〈1〉ロワール流域から北へ 歴史教科書で有名な山川の「世界歴史の旅」シリーズ。前半の歴史篇を福井憲彦、後半の各地篇と写真を稲葉宏爾が担当する。こんなのを見るにつけ、あゝ、まだまだフランスを知らぬことよなう、との感慨に耽らざるを得ない。尤も、日本についてだって知らぬ地だらけなのだが。
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