サルコジ任命の François Fillon [フランソワ・フィヨン] による組閣が完了。新内閣は、15閣僚と大幅削減、うち7名が女性なのは、パリテ――男女同数――法に基づいてゐる。 話題は、外務・欧州大臣の Bernard Kouchner [ベルナール・クシュネル]。国境無き医師団(MSF = Médecins sans Frontières [メドゥサン・サン・フロンティエール])の創設者にして、社会党所属であったが、この「開かれた政府」に参加したことで、社会党を除名された。サルコ側の思惑は、もちろん、下院総選挙対策。 それから、国璽尚書――コクジショーショと読むぞ。ちなみに、原語は Garde des Sceaux [ガルド・デ・ソー]。法務大臣の別名であるが、後に Ministre de la Justice と続けられることも多い――に任じられたRachida Dati [ラシダ・ダティ]。彼女は与党 UMP の所属だが、モロッコ系の父親とアルジェリア系の母親の間に生まれた「マグレブ系」なのだ。これまた、アカラサマな人事ではないか。 なほ、52歳のサルコジ大統領下新内閣の平均年齢は53歳。最年少は、39歳の高等教育・研究大臣 Ministre de l'Enseignement supérieur et de la Recherche のValérie Pécresse [ヴァレリー・ペクレス]。ダティは42歳、クシュネルは67歳で最長老である。
土曜は朝9時集合で、教育学会の講演会準備をし、10時からは語学会のシンポに出席。隣に坐わったRちゃんの傘の柄についてる猫の顔がたいさう可愛らしいので、見せてもらひ、猫談義。彼女も「猫派」で、ついでに英語では "cat person" てふのだと教へてくれる。「わたしは猫派」は "I'm a cat person." ださうだ。しかし、そこは語学屋同士、すぐに、ぢゃあフランス語では、となる。"Je suis très chat." だと「猫っぽい」の意味にもなるから、どうなんだらうてふのが結論。ちなみに「コーヒー派」なら "Je suis très café." でOK。「コーヒーっぽい」って解釈があり得ないからね、ってなハナシに。 その後は、教育学会のバラシに参加して、前幹事長の小松さんらと昼食。さらに、文学会のワークショップまでの時間をお墓参りにあて、千代田線で千駄木へ。さう、福島家の墓は、谷中の長命寺にあるのだ。 蜻蛉返りで明大に戻り、ワークショップ「世界のフランコフォン」に参加。チュニジア、セネガル、ケベック、マルティニークのハナシを聞く。 その後の懇親会で会ったH社のワッキー――かつて『新劇』→『しんげき』→『Les Spec』と名を変へた雑誌の最後の編集長を、当時弱冠24歳で務めたひとである。最終号を持ってゐるといふたら、それはレアものですよ、といふてた――とともに、O大のFさん、N外大院生のAくん、S社のジンくんを拉致って、このほど町屋に引き越したH社すーちゃんのもとへ。町屋も千代田線一本でゆけるのであった。もちろん、戻りも千代田線一本。 翌日曜日も朝から仏文学会。 しかし、前日にパソコンのACアダプタがぶっ壊れ、充電ができないため、仕事が全然できないのには難渋した。
5・6仏大決戦は、投票〆切直後、早々にサル公の当確が出た。54.2%とは France 3 の数字であるが、ほゞ事前調査どほり。山は動かずであった。 これでフランスは、アメリカ型自由競争社会を目指すことになるわけだ。富める者は益々富み、貧しき者は愈々貧しくなる。小泉的格差増大社会の到来である。移民はより規制され、移民系は「移民系市民」として実体化され、「非移民系市民」との間に溝がうがたれ、極右的「移民系は父祖の国へ帰れ」言説が幅をきかすやうになるやもしれん。桑原クハバラ。 6月の国民議会 Assemblée nationale [アッサンブレ・ナスィヨナル]――日本の衆議院にあたる――選挙でも、サル公のUMP勝利の可能性が高い。今回、反サル公を表明した中道右派のバイルーは、UDFが吹っ飛んだ――所属議員の半数がサルコジ支持に走った――ため、新たに「民主党」(仮)を結党して、左右双方に不満の中道派の結集を計るやうだが、はたして、なんぼの議席を獲得できるものか。そして、セゴ姐と、またも敗れた社会党の行方は。 ところで、酒を呑まない(呑めない?)新大統領は、ワイン講釈ができないワインの国のトップとして、外交の重要なアイテムであるお食事会をどう切り抜けるのであらう。アンチョコ丸暗記か?