黒猫亭舊館
黒猫亭主人謹製藏書録・贅言他
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2006.07.27(Jeu)21:45  ルイ=ジャン・カルヴェ『言語学と植民地主義――ことば喰い小論』(三元社)
言語学と植民地主義―ことば喰い小論

言語学と植民地主義―ことば喰い小論 フランス社会言語学の泰斗、Luois-Jean CALVET が1974年、32歳で書いた本。副題の「ことば喰ひ」とは glottophagie の訳であるが、-phagie てふ接尾辞は、「マクロファージ」macrophage(大喰ひ−細胞)にも使はれてゐるやうに、「〜を喰らふ」の意で、これはつまり、植民地言語政策のことである。じつは、1988年版の原著を持ってゐるのだが、これは、その後に出た2002年版が底本となってゐる。若きカルヴェの「反植民地主義・反帝国主義」的情熱は、「反グローバリズム」となり、結果的に「共和主義者」となったやうに見受けられるが、いづれにしても「本質主義」てふ「陥穽」に嵌らぬやう注意が必要であらう。
 訳者の砂野幸稔は、熊本県大の教授で、アフリカの仏語圏文学が専門。あとがきは熱い想ひにあふれてゐるぞ。
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2006.07.26(Mer)22:05  Ciao Bella !
 BSの代金も払ってるのに、地アナしか見られないのは理不尽と、こゝにきて漸く地デジチューナを買ったら、110度CSチューナもついてゐたので、TV5の視聴が可能となった(991チャンネル)。
 そこで水曜の21:30-22:00に放映されてゐるのが、Ciao Bella ! [チャオ・ベッラ(こんちわ可愛こちゃん!)]。タイトルどほり、イタリア人によるイタリア・ドラマである。ところが、この放送は、イタリア役者が、フランス語で喋ってをり、そのイタリア訛りときたら、おのれの日本訛りも忘れて喝采するほどの訛りっぷりで、どれくらゐかてふと、フランス語字幕がつくくらゐだ。同じラテン系で、違ひの習得も容易と云はれる仏伊両語にさへ、斯様な溝が横たはってゐるとは、語学の道は深くて遠い。ロー・エンド・ロー。
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2006.07.26(Mer)05:00  日高トモキチ『みぞれの教室』(角川書店ドラゴンコミックス)
みぞれの教室

みぞれの教室 唯一毎月買ふ漫画雑誌『まんがくららぶオリジナル』で「爆笑! お見合い探偵局」を連載してゐる日高トモキチ、10年ぶりの単行本。ある日、美少女が転校してきて――男子高校生ひと夏の想ひ出てふ直球勝負の作品である。なにしろ「くらオリ」8月号で、当人自ら「あおくさいよ」てふくらゐだ。
 表紙と裏表紙に、フランス語で「風の強い朝、ぼくは教室でひとりの女の子に出会った。彼女の名前は『みぞれ』。その日から、ぼくの小さな世界はふだんとはちがふ向きに回り始めた」と書いてある(と思はれる)が、最後の文章はいささか間違ってゐる。また、la direction different と女性形への一致が行なはれてゐないのはウッカリミスであらう。
 ところで、愛読してきた「爆笑! お見合い探偵局」、この9月号で終了してしまった。このところ、どんどん連載を切ってゐる『くらオリ』。梃入れなのか?
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2006.07.24(Lun)09:16  TV5のフランス語教育サイト
メモ。
110度CSの見られる環境なら、チャンネル991で夕方から視聴可能。

フランスのテレビ局TV5
http://www.tv5.org/

フランス語学習ページ
http://www.tv5.org/TV5Site/lf/langue_francaise.php

教師用ページ
http://www.tv5.org/TV5Site/enseignants/apprendre_francais.php

音楽ページ
http://www.tv5.org/TV5Site/musique/accueil.php

音楽で学ぶのページ(PV、歌詞、読解、練習問題など)
http://www.tv5.org/TV5Site/enseignants/musique.php
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2006.07.22(Sam)23:56  Marie Madeleine の日
 フランス語では「マリー・マドレーヌ」。イタリア語では「マリア・マッダレーナ」。と云へば、「ダ・ヴィンチ・コード」で一躍人気の「マグダラのマリア」さまで、その祝日は7/22である。所謂「罪の女」はマグダラのマリアであるとされてゐるが、そのせゐで、聖マグダラのマリアは、娼婦たちの守護聖人にもなった。法王グレゴリウス1世は、さらに、ベタニアのマリアも同一人物としたので、絵画では、キリストの足に香油を塗ったときの香油壺が描き込まれることがおほい。
 この聖女は、聖母マリアさまよりだんぜん人間くさいせゐか、たとへば George de La Tour [ジョルジュ・ド・ラ・トゥール]の「悔悛のマグダラ(聖なる火のマリア)」や Jusepe de Ribera [フセペ・デ・リベーラ]の「荒野のマグダラ」など、美術の主題としてたいへん人気がある。復活したイエスを最初に目撃したのは彼女であるが、そのをり、彼に触らうとして、「我に触れる勿れ」Noli me tangere [ノリ・メ・タンゲレ] と制されるシーンも、さまざまな絵画に描かれてきた。じつは、小生もかねてからの贔屓だったりするぞ。
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八木重吉

「マグダラのマリア」

マリアはひざまづいて
私ほど悪るい女はないとおもった
キリストと呼ばれる人のまへへきたとき
死体のように身躰をなげだした
すると不思議にも
まったく新らしいよろこびがマリアをおののかせた
マリアはたちまち長い髪をほどき
尊い香料の瓶の口をくだいて髪をひたし
キリストの足を心をこめてぬぐうた
香料にはマリアの涙があたたかく混じった
マリアは自分の罪がみな輝いてくるのをうっとりと感じてゐた
(『野火』所収)
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2006.07.20(Jeu)08:01  山本文子&BLサポーターズ『やっぱりボーイズラブが好き』(太田出版)
やっぱりボーイズラブが好き―完全BLコミックガイド

やっぱりボーイズラブが好き―完全BLコミックガイド 今やすっかり市民権を得た感のある「ホモ漫画」のガイドブック。BL史、必読BL漫画家詳細解説、「メガネ」「職業」「お笑ひ」「ドラマ」「禁断」等のカテゴリ別作品ガイドなど、大変充実した内容。これは便利だ。九州男児(=松山花子の別名)による表紙&裏表紙も笑へる。
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2006.07.20(Jeu)07:33  吾妻ひでお『定本 ときめきアリス』(チクマ秀版社)
ときめきアリス―定本

ときめきアリス―定本 失踪日記以来、俄に復活した感のある吾妻ひでおの20年前の本に、おまけを付けて復刊したもの。1985年前後は、それまでのマニアック不条理路線を修正しようとして、ロリコンものの先駆者となったりしてた頃であるが、この後1冊出したところで、長い休筆期間に這入る――その間、2度失踪してゐた――。謂はゞ行き詰まりを打破すべく葛藤してゐた時期の作品といへよう。
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2006.07.17(Lun)07:25  古屋兎丸『ライチ☆光クラブ』(太田出版)
ライチ☆光クラブ

ライチ☆光クラブ 1985年冬、友人に誘はれてとある芝居を見た高2の兎丸少年は大ショックを受け、以後アングラ文化に染まってゆく。1年後に見た「ライチ光クラブ」は、彼に決定的な影響をあたへ、美大入学後、芝居をはじめることになるが、彼は結局、漫画家になった。その劇団こそ、「東京グランギニョル」、飴屋法水(あめや・のりみず)率ゐるカルト劇団であった。それから20年、兎丸は、その芝居を漫画として再構成した。ストーリーも一部変更されてゐるやうだが、いづれにせよこれは、グランギニョル版とは異なる兎丸作品であらう。連載されたのは『マンガ・エロティクスf』だが、エロはほとんど現はれず、むしろグロの連続となる。
 なほ、「光クラブ」とは、1949年に社長の自殺で幕を閉ぢた、東大生によるヤミ金融会社の社名でもある。この「光クラブ事件」は、所謂「アプレ・ゲール」(après guerre 戦後) 世代の「アプレ事件」としても記憶されてゐる。
 さらに「残酷劇」と訳されてゐる「グランギニョル」(Grand-Guignol) とは、1897年にパリのモンマルトル界隈に開かれた劇場の名前。当時の風潮にしたがひ、「ホラー・サスペンス」を上演したので、grand-guignolesque [グラン・ギニョレスク](グラン・ギニョル的おぞましげな)てふ形容詞ができたくらゐであった。また、guignol とは「人形劇」のことだが、人形劇で有名なリヨンにおいて、人形劇の登場人物の絹織物工の名前に由来する。そこから劇場の名前になり、最終的に――「文楽」が「植村文楽軒」の劇場「文楽座」から拡張したごとく――芝居の形式名にまで拡張された。つまり、Grand-Guignol とは、「大きな人形=人間」が演ずる芝居の小屋てふ意味である。
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2006.07.16(Dim)08:34  羽海野チカ『ハチミツとクローバー』9(集英社クイーンズ・コミックス)
ハチミツとクローバー(9)

ハチミツとクローバー 9 (9) あゝ、根岸のをぢさん……! あゝ、はぐッ……! あゝ、山崎ッ……!
 こゝへ来て、森田兄弟の過去が明らかに。
 そして、あゝ、花本先生……!!
 ちなみに、初版にはミドリちゃんマグネット付き。
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  • カシロス (2006/07/27 00:46)
    展開にびっくりでした。私もミドリちゃんマグネットゲットしましたーー!冷蔵庫にはってます♪
  • 黒猫亭主人 (2006/07/28 05:36)
    これはこれはカシロスくん、メルシー・ド・ご来訪。小生のミドリちゃんは、本につけたまま、劇団の女優さんとこに貸し出されてます。しばらく戻ってこない……。
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2006.07.14(Ven)  TVロケ
 大阪市のPR番組に『かつみ♥さゆりのまるごと♥おおさか』てふのがあって、去年から大阪市立大学のオープンキャンパスを取り上げてくれてゐる。ことしも8/7-8の本番に合はせて、OCでやる内容を先取り紹介すべく、杉本町でロケが行なはれた(放映は7/30)。
 昨年は社会学の木村先生のコンピュータ授業の内容が取り上げられたが、今年は担当係長の語学をてふ思ひから、小生が出馬することに。仏文の学生と現在教へてゐる1回生からダミー学生を掻き集め、CALL教室でフランス語の授業デモ。たいへん sympa なかつみ・さゆりご両人は、たちまちに学生たちと馴染んでくだすって、学生たちも大喜び。殊に、TVに映る気満々の女子は、さゆりさんに「同じ匂ひがする」と云はれボヨヨーンをやってもらって大満足の態であった。尤も、かつみさんが「ばっさりカットやで」と云ふたとほりなので、何秒残ることやら。
 ところで、その結果、小生、OC中に、斯様な「コンピュータでフラ語」のデモをやらねばならんのだが、誰とハナシを詰めればよいのだ?
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  • 黒猫亭主人 (2006/07/26 22:21)
    その後のシナリオを見るに、正味2分少々。われわれのシーンは30秒ほどか。
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2006.07.13(Jeu)  博物館施設
 船場アートカフェのディレクタ仲間である花村さんからの紹介で、なぜか兵庫県立人と自然の博物館――略称「ひとはく」――のリニューアル構想基礎検討ワーキング委員を務めてゐる。7-8月に4回の会議でリニューアル・アイディアをまとめるてふ短期決戦型だ。委員は3名で、座長は関学総合政策学部の角野幸博先生、もうひとりの委員は、シーザー・ペリ&アソシエーツ・ジャパン所属時代に総括主任技術者として大阪国立国際美術館の設計・建築を手がけた高原浩之さん。お二人とも一級建築士なうへ、ひとはくの主任・田原直樹先生も一級建築士と、工学畑率の甚だ高い会議である。いっぱう、角野先生、じつは京大時代は芝居屋で、西部講堂で芝居なさってたさうだし、兵庫県の前担当・大本主事は、いまでも音響スタッフとして、ときどき芝居の現場に出てゐるてふ、芝居屋率もなかなかの委員会なのだ。
 この日は、角野先生の旧職場の電通から、数々の博物館施設やテーマパークを手がけた笠井良平局次長が話題提供者として登場。日本はもとより世界中の博物館施設を見たふした知見と、数々の施設のコーディネートを手がけた経験は大層貴重で、業界人風の身なり・話しぶりとも相俟って、えゝもん見せてもろた、いふ感じ。
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2006.07.11(Mar)  巴里祭
grp0716073921.jpg 800×600 252K フランス言語文化教室では、このところ毎年この時期に「巴里祭」と称して、文学部1回生に「フランス風」軽食を振る舞ふ会を催してゐる。もちろん、仏文にきてもらふための勧誘作戦だが、なかなか思ふやうに来てくれるものでもない。たゞ、院生・上回生も参加する教室行事となってゐるので、仏文のノリの良さと sympa さは感じてもらへるのではないか、と密かにたのむところはある。
 おいしいチーズと焼きたてバゲット、サラダにペースト、デザート。もちろんワインも出るが、これはもっぱらホスト側の楽しみに消費される。
 ことしは北花田阪急にて買ひ出した焼きたてバゲット、増量すべきか否か悩んで、けっきょく買ひ足さなかったのだが、結果的には大はづれ。女子が大半を占める我が生徒たちは、30分たらずで、すべてを喰ひ尽くしたのであった。
 12時過ぎから開始して、13時で中〆だが、その後も数人がだらだらと雑談。大樹に「お話し番長」を強ひた結果、かなりがんばってトークをしてくれ、最後に残った2名とはかなり話し込んでゐた様子。
 5限目になり、小生が教育促進支援機構の「留学支援セミナ」で抜けてるあひだに終了したが、18時過ぎからは、援機構と仏文の合同打ち上げが「紀月」2階にて開催された。
(写真は、準備中の図。もう一部屋でも同じものが用意されてゐる)
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2006.07.09(Dim)01:03  漢字バトン
マイミクことみ☆.・゜ さんから7/2に頂いてゐたバトンを消化。

■1.バトンを回してくれた人に対して持つイメージの漢字は?
「寧」。「やすらか」「むしろ」「いづくんぞ」。家中で落ち着いてるイメージ(のハズ)。

■2.前の人が答へた漢字に対して自分が持つイメージは?
「声」……「聲」の略字。なんか不安定。やっぱ「聲」の方がえゝわ。
「杜」……北杜夫。遠藤周作の『ぐうたら交友録』に出てくる「北杜夫の巻」は傑作。
「空」……「クウ」なのか「ソラ」なのか「カラ」なのか。ちなみに孫悟空の「悟空」とは「空=無の宇宙の真理を悟る」であるが、「宇(空間)宙(時間)」なのに、「宙」は「空」と似た意味にもちゐられる。「カラ」どころか意味が詰まった字ですな。

■4.漢字のことをどう思う?
小学生のころからフェチであった。だが、ワープロのせゐで手書きの習慣と出せる漢字の量を失ってから、どんどん書けなくなってるのが悲しい。

■5.最後にあなたの好きな四字熟語を……
さうですな、筆名にもしてゐる「漱石枕流」にしておかう。

■6.次の人に回す漢字を3つ
「旭」「紫」「柊」。10代の頃、意味もなく偏愛してゐた漢字群から。

■7.バトンを回す人7人とその人をイメージ
「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」に当てはまる人々どなたでも。勿論、八犬士もOKだ。ひとり多いが。
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  • ことみ (2006/07/09 10:06)
    バトンありがとうございます。・・・「寧」とは予想外。
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2006.07.08(Sam)07:06  七夕の素麺
 昭和48年すなはち1973年に、角川から『日本の民話』てふ12巻本のシリーズが出てゐた――後に文庫にもなってゐるが、もちろん絶版――。編者は、瀬川拓男と松谷みよ子――『モモちゃん』シリーズの作家としても有名――の元ご夫婦。小生、たいさう愛読した結果、いっときは民俗学に志したほどである。
 その第6巻『土着の信仰』のなかに、岩手県民話を瀬川拓男が再話した「節句のすすき餅」てふ話が載ってゐる。――遙か昔、ある山里に若い夫婦が住んでゐて、妻が曼荼羅を織り、夫がそれを街々に売り歩いて生計を立てゝゐたが、妻がすこぶる別嬪さんなので、夫の留守中に妻に云ひ寄る男どもが絶えなかった。つまり、オデュッセウスの妻ペネローペイアの日本版である。もちろん妻は歯牙にも掛けなかったのだが、あるとき、夫が甚だ遠方に出かけてなかなか戻って来ず、さすがの妻も不安になりはじめたところへ、悪い男どものひとりがつひに彼女を襲ふてふ暴挙に出た。そのため、夫の名を呼びながら逃げ出した妻は、川に身を投げてしまふ。一方、妻からの連絡が途絶えた夫は、不吉な思ひに駆られて家に戻ると、川に妻の亡骸が浮かびあがったところであった。その躰をかき抱きながら、夫は幾日も泣き明かしたが、ある日、到頭、妻の屍の一部を切り取ると、すゝきの葉に包んで食べはじめた。それは五月五日のことであったが、端午の節句にすゝきの葉に餅を包んで食べる風習は、こゝから来たといふ。また、七月七日には、妻の「筋ハナギ」(筋繊維のことか?)をこそいで素麺にして食べたので、七夕に素麺を作る風習ができた。なほ、このあたりの村では、五月中は機織りを慎み、もし織るときには蓑をかぶせて隠さねばならぬと伝へられてゐる。
 数多い民話の中で、この話が記憶に残るのは、これが日本における食人 cannibalisme のポジティヴな展開の希有な例だからである。化け物が人を取って喰ふの展開は大変多いが、屍体を食べたのが現在の風習の始まりてふ例は、小生、寡聞にして、これより他に知らぬ。
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  • しらた (2006/07/08 17:52)
    松谷さんはたしか民話採集をしてはりましたね。『おしになった娘』も言い伝えを元にしたものらしいですが、『龍の子太郎』で龍になった母が赤ん坊の食べ物として自分の眼を与えたのも何か元話があるんでしょうか。
  • 黒猫亭主人 (2006/07/09 01:01)
    上のシリーズの第2巻『自然の精霊』に収録されてゐる東北民話「蛇の目玉」(再話は清水真弓)がまさにそれですな。ちなみに、「蛇嫁伝承」は古今東西に流布してゐて、フランス中世文学の「メリュジーヌ物語」もそのひとつ。尤も、目玉は出てきませんがね。
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2006.07.08(Sam)06:37  伊坂幸太郎『重力ピエロ』(新潮文庫)
重力ピエロ

重力ピエロ 小西先生に「伊坂幸太郎ってええで」と云はれて気にはしてゐたのであるが、最初に購入したのは、たまたま電子ファイル版で売られてゐた『陽気なギャングが地球を回す』。こいつはテクストファイルだったので、携帯に入れて読んだ――現在、そのファイルは行方不明。勿体ない――が、たしかに、評判の文体には感心したものだ。
 その後、文庫になった『オーデュボンの祈り』『ラッシュライフ』と文庫がでるたび購入して、今回の書籍(しょじゃく)。直木賞落選作でもある。
 なほ、伊坂幸太郎は、文庫化に当たって手を入れるのが常ださうで、今回も一部加筆が行なはれてゐるぞ。
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2006.07.06(Jeu)00:19  松尾スズキ『まとまったお金の唄』(白水社)
まとまったお金の唄

まとまったお金の唄 今をときめくエビちゃんこと蛯原友里は、九州産業大学芸術学部デザイン科卒業で、在学中にバイトしてた福岡の百貨店だかでスカウトされたさうであるが、この大学、芸能界へは、江頭2:50、長渕剛、松村邦洋、ヒロシと、なかなかの排出ぶりであり、アート系でも漫画家・北条司てふ先輩を擁してゐる。
 さて、この九産大のデザイン学科出身――すなはちエビちゃんの直系の先輩――に、岸田戯曲賞作家の松尾スズキがゐる。云はずとしれた劇団大人計画の座長でもある。その松尾スズキの最新戯曲が、1970年の「オオチャカ万博」と学生運動をモチーフとした『まとまったお金の唄』。モデル→女優の市川実和子を客演に向かへての芝居であったが、流石スズキ、官九郎とは全然違った趣きの、アホらしさと切なさではあった。
 しかし、祈りのすゑに、お菓子の神様が「♪チローリアーン」と云ひながらあはられるのにはワロタワロタ。同世代ってすばらしい。
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2006.07.03(Lun)23:56  万国郵便連合
 旅先のフランスで投函した端書が日本にちゃんと届くのは、まったくもって、1875年に誕生した「万国郵便連合」(日本は早くも1877年に加盟)のお陰に相違ない。この組織、略称をUPUといふが、これは、仏語の Union postale universelle [ユニヨン・ポスタル・ユニヴェルセル] の略であって、英語の Universal Postal Union の略ではないのだが、どっちの略称も UPU なので、Wikipedia 日本語版なんかでははっきりしてゐないうへ、「英語と仏語が公用語」とか書かれてゐる。だが、リンクに張ってある「法庫」の「万国郵便連合一般規則」の107条にはフランス語と英語を「業務用言語」とするとはある――国連とおんなしですな――が、「公用語」とは書かれてゐない。これは国連同様、現場作業用の言語のことであって、象徴的筆頭言語のこととは、もちろん異なる。続く108条に、「1 連合の書類には、フランス語、英語、アラビア語及びスペイン語を使用する。ドイツ語、中国語、ポルトガル語及びロシア語も、これらの言語による書類の作成が特に重要な基本的な書類に限られることを条件として、使用することができる。その他の言語も、当該言語の使用を請求する加盟国が関係するすべての費用を負担することを条件として、使用することができる」とあることから、メイン言語は仏・英・ア・西で、独・中・葡・露も条件付きで使へるてふことだが、同13項において、「加盟国の郵政庁は、相互間における業務上の通信に使用する言語について取決めを行うことができる。取決めがない場合には、使用する言語は、フランス語とする」てふことから、第1言語はフランス語であることが分明である。
 てふわけで、「万国郵便連合」の筆頭言語はフランス語なのだ。みなさん、ご注意あれ。したがって、日本の郵便局でも Par Avion くらゐはちゃんと判ってもらふ必要があらう。てふか、初級仏語を必須科目にすべきではないのか。過日、Par Avion と朱書きして持ってったのに理解してもらへなかった経験を持つ小生としては、声を大にして云ひたい――「英語と英語しか判らん郵便局員なんざバクテリオ・ファージに喰はれてしまへ!!」。
 ちなみに、「オリンピック憲章」でも「オリンピック憲章、及びその他のあらゆるIOC 関連の文書に、フランス語版と英語版との間に相違がある場合は、フランス語版が優先されるものとする」とあって、こゝでも「筆頭言語」はフランス語であることが明言されてゐる。なんでも中心は英語だと思ってる eigo-centriste は注意されたし。
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2006.07.03(Lun)12:06  パリ大好き
 映画 Paris je t'aime [パリ・ジュ・テーム]。現在フランスで上映中。海外勢も含む12人の監督たちを集め、「愛」をテーマに、パリの各所が舞台の5分のショート・シネマを撮らせるてふ企画。日本からは、おフランスの似合ふ諏訪敦彦が Place des Victoires [プラース・デ・ヴィクトワール](ヴィクトワール広場=パレロワイヤルの北側、Kenzo のブティックがある)で参加。役者としてはジェラール・ドパルデュー、ジュリエット・ビノシュらの他、ナタリー・ポートマンなんかも出演。パリ市の宣伝映画か?

公式サイト。
http://www.parisjetaime-lefilm.com/
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2006.07.02(Dim)06:05  「統合」と「同化」
 なんと、フランス、ブラジルに勝ってしまった。前回1次リーグ敗退が、4強である。地元ドイツは、仏、伊、葡のラテン系に囲まれたわけだ。
 ところで、Les Bleus(仏チームのこと。ユニホームの色から)の DF リリアン・テュラム (Lilian Thuram, Guadeloupe[グアドループ]出身) は、政府の Haut Conseil à l'Intégration [オ・コンセイユ・ア・ランテグラスィヨン] メンバーを務めてゐる。これは、首相の諮問機関で、他に、サッカー選手からパリの区会議員になった Zaïr Kedadouche [ザイール・ケダドゥーシュ](マグレブ系)や、留学生で渡仏してアカデミー・フランセーズのメンバーにまでなった François Cheng [フランソワ・チェン](中国系)なんかゞゐる。これが、下の陣野さんの本では「同化高等弁務官」を務めてゐるとされてゐるが、これはやはり「統合高等委員会委員」とすべきであらう。たしかに、intégration を「統合・同化」としてゐる辞書もあるが、「統合」と「同化」は異なるものだからである。Grand Robert では intégration は「一体化すること」s'incorporer であり「分離すること」séparation の反対語としてある。いっぱう、「同化」は assimilation の訳にあてるべきで、こちらは「似たものになること」の意だ。
 仏政府の移民・外国人政策は「統合」であり、「同化」ではない。「同化」は「統合」によって齎される結果なのであり、究極には目指してゐるとしても、直接の目標ではないのである。
 語感は頗る重要なものであるから――殊に学生諸君には――敏感であってほしい。ことばは努(ユメ)おろそかにするべからず。
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2006.07.01(Sam)17:09  陣野俊史『フランス暴動――移民法とラップ・フランセ――』(河出書房新社)
フランス暴動――移民法とラップ・フランセ

フランス暴動――移民法とラップ・フランセ これまでもサッカーやヒップ・ホップ、アングラ(?)バンド「渋さ知らズ」などの本を書いてきた評論家・陣野俊史により、あの昨年秋の「暴動」を受けて緊急に書かれた本。あの「暴動」では、ラップの歌詞が火に油を注ぐ結果になったとされたことから、ラップとラッパーたちの現状を検証し、その結果、ラッパーたちにもさまざまな在り方が存在するてふ、当然の事態を確認することになる……。
 たしかに、昨年の「暴動」のをりに、10年ほど前には「郊外(バンリュー)」のカリスマだったラップ・グループ NTM [エヌ・テ・エム](=Nique ta mère [ニク・タ・メール]=ファック・ユア・マザー。罵り文句)の影響力の衰へは否めなかった。だが、ラップが「郊外の若者の表現手段」である以上、その形は、攻撃以外の姿――たとへば、連帯の徴――をとることがあっても、まったく意外ではないのだ。
 巻末に、ラップ・グループの簡単な解説リストを付す。
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