★2008.07.30(Mer)06:07
椎名軽穂『君に届け』7(集英社 マーガレットコミックス)
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君に届け 7 (7) (マーガレットコミックス)
今年、第32回講談社漫画賞少女部門――第1回受賞作は、『はいからさんが通る』と『キャンディ・キャンディ』だ――を受賞するに到った人気作の7巻目。椎名作品では最大巻数になったやうだ。ちなみに、講談社漫画賞は、当然のことながら講談社作品の受賞率が高く、小学館漫画賞は所謂「一ツ橋グループ」――小学館と、そこから分かれた集英社と、そこから分かれた白泉社――作品の受賞率が高いわけだが、ときに、このやうな相手方の作品の受賞がある。調べればわかるのだけど、両賞を受賞した作品はあるのだらうか。 さて、オハナシの方は、前号の携帯ゲット&クリスマス会を承けて、今号は、大晦日からヴァレンタイン・デイまで。ちなみに、大晦日は、爽子の16歳の誕生日なのだ(12/31の23:45生まれ。をしくも一目上がりになりきらず)。矢野ちんとちづに綺麗にしてもらった爽子は、風早とふたりきりにされ、はからずも初デート。にもかゝはらず、ヴァレンタインでは、チョコを渡すべきか悶々と。さらに、ラストあたりにチラリと新キャラ風の男子が。 せっかく塗ってもらったマスカラを流すまいと、泪をこらへる爽子の必死の形相がコハイくて笑へる。そして、初版限定附録は、マルちゃんのペーパークラフトだ。 | | |
★2008.07.30(Mer)06:06
能町みね子とフランス語
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★2008.07.29(Mar)06:06
荒木映子『第一次世界大戦とモダニズム――数の衝撃(ショック)』(世界思想社)
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第一次世界大戦とモダニズム―数の衝撃 (世界思想ゼミナール)
序章において、ヴィリリオの「軍服=死化粧」を引きつつ、軍服がひとを魅了するのは、聖セバスチャン的「受傷肉体美」――「その繪を見た刹那、私の全存在は、或る異教的な歡喜に押しゆるがされた」(假面の告白)――や決闘男子間によこたはる愛のせゐであると書く筆者は、イェイツの戦争詩の検討から、第1次世界大戦とモダニズムの問題にゆきあたる。そしてその関係を、19世紀末からの「人口爆発」と、第1次世界大戦による「大量死」てふ、「数の衝撃」に見いだした。 そもそも、「モダン=革新」をめざすモダニズムは、戦争も「進歩」の一環と捉へてゐた可能性があるが、それが、人類史上初の「大量死」を呈して、進歩・文明への信頼を瓦解させてしまった。そのショックが、モダニズムをして、「言語化不能なもの」「全体・統一」への求心力を高めたとする。 筆者は大阪市立大学大学院文学研究科表現文化学の教授。終章の末尾とあとがきに、「表現文化」に身を置くことにより齎された文章が記されてゐる。そしてこれは、著者献本であった。ありがたう、荒木先生! | | |
★2008.07.28(Lun)05:33
矢作俊彦『傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを』(講談社)
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傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを
1974年の10月から2クール放映された、ショーケン主演のかの有名ドラマ『傷だらけの天使』。弟分の亨(アキラ)――演ずるは水谷豊。「兄貴ィ」の口調が頗る有名になったが、当時はさほど名が売れず、4年後に『熱中時代』でブレイクするまでは、地味な存在であった――の死で幕切れを迎へた「傷天」だが、その30数年を描いたてふのが本作。『小説現代』特別編集と銘打たれた、ショーケンが表紙の『不良読本』vol.1に一挙掲載されたものの、加筆改稿版である。 モノガタリは、ブルーシート・ハウスでの修の目覚めから始まる――もちろん、これまた有名なオープニングのパロディがおこなはれる――。60前の彼は、ホームレス――修は「宿無し」だと主張する――になってゐたのだ。そのホームレス仲間のひとりが重傷を負った。それも、修に間違はれたことが原因らしい。かうして、修は、否応なく巨大な事件に巻き込まれてゆく。 仲間になるのは、修を社会復帰プログラムに参加させようとつきまとふ市役所の公務員――本名はラストで明らかになるが、ある有名ヒーローと同姓同名だ――、かつて住んでゐたビルのオーナーの孫娘・典子、高級車を乗り回す美少女・澪(レイ)。敵役は、かつての雇ひ主・綾部貴子――ドラマで演じてゐた岸田今日子はもうゐない。右腕役だった(今日子の従弟の)岸田森もだ――と、IT企業社長ケント・クラーク、そして都知事・石山信次郎。 外国人のあふれる無国籍都市となった新宿舞台にした作品は多く、インターネットも駆使したストーリー――「セカンド・ライフ」風のヴァーチャル・ワールドや、Google Eeath も出てくる――もありふれてゐるが、「傷天」を換骨奪胎し、要教養のお笑ひをしこたま詰め込んで展開するのは、しっかり矢作ワールドだ。矢作贔屓の小生的には大満足。 | | |
★2008.07.28(Lun)05:34
中村光『聖☆おにいさん』2(講談社モーニングKC)
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聖☆おにいさん 2 (2) (モーニングKC)
一部では大層有名になってきた中村光の作品の2巻目。今度、ジュンク堂大阪本店でサイン会やるのだが、100枚限定の整理券は30分で無くなったらしい。1巻目のエントリのコメントにも書いたのだが、「やんちゃなイエスと大人のブッダ」の図式は、「イエス=ボケ、ブッダ=つっこみ」になりがちなので、もっとブッダに活躍してほしいものだ。 てふわけで、ツボに這入ったこの巻のネタ。
・三途の川を渡ることが「帰省」になっちゃふブッダ。 ・尾崎豊とリンクしちゃふブッダ。 ・聖顔布がど根性ガエルになっちゃふイエス(Tシャツの文字は、当然「ベロニカ」)。 | | |
★2008.07.22(Mar)08:08
卒論・レポート代行業
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★2008.07.21(Lun)06:10
紺條夏生『妄想少女オタク系』4(双葉社 アクションコミックス)
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妄想少女オタク系 4 (4) (アクションコミックス) (アクションコミックス)
新キャラ、隠れ腐女子――本人は腐ってないと主張――の、阿部くんと同中(おなちゅう)にて、同じ水泳部所属でもあった百瀬さんが登場、阿部くんと浅井さんの仲を攪乱する。いっぱう、千葉くんと松井さんの仲も、一線を越えかけるとこまでゆきながら挫折、こちらも新キャラ葵さん――千葉姉の友人にして、千葉くんと訳ありさうな巨乳美女――の登場で、一波乱。だが、葵さんの描いたBL同人漫画で、諸々理解できちゃふ松井さんがスゴすぎる。 | | |
★2008.07.17(Jeu)07:26
フレンチ・ハイティーン雑誌
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★2008.07.15(Mar)03:29
巴里祭2008
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| 仏文恒例、1回生仏語履修者を招いての巴里祭、今年は本家フランスの「パリ祭」Quatreze juillet とおなじ7/14となった。 今年の会場は、田中記念館展示室。教室行事てふことで、借用料減免申請をしての開催である――結局、無料になった――。 今年は3回生のシホコがプロデューサとして気張ってくれ、ユタカのサックス演奏もあったが、3限の授業のためか、1回生たちはたいてい昼休みだけで帰ってしまひ、些か拍子抜けではあった。尤も、3限以降は、仏文内輪のまったり会で良かったのだが。 ゲストは、ラヴェルさんの娘さんイザベル、仏文OBの森本さん、英文OBの福岡さん。映画部OBの森本さんは、現映研部長のシホコに同人雑誌を持ってきてなにやら説明してゐる。50年ほどの時を超えた交流であった。 | | |
★2008.07.11(Ven)06:08
PPDA最後の挨拶
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★2008.07.10(Jeu)05:35
トジツキハジメ『千一秒物語』(海王社 GUSH COMICS)
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千一秒物語 (GUSH COMICS)
主人公の千乃介(せんのすけ)は、天が二物も三物もあたへてくれたおかげで、超人気者高校生。呑気にすごす彼だが、そんな彼にも、叶はぬ恋が。相手は、もちろん、双子の兄、一乃介であった。 「人外ラヴ萌え」のトジツキハジメの短篇連作であるが、彼女の「明るくてエロくない」面がフィーチャリングされた一冊――ちなみに、このひと、さうでなければ「暗くてエロい」のどっちかしかない――。モテ男でもある山羊座のO型――小生もさうだ!――の千乃介の恋の行方や如何に?? タイトルは勿論、稲垣足穂『一千一秒物語』のもぢりであらう。テイストは全然違ふのだが、トジツキは、タルホマニアなのであらうか?? ちなみに、おまけについてる漫画は、かけると見る人すべてが猫耳(+猫尾)に見える眼鏡をめぐるオハナシふたつだ。 | | |
★2008.07.10(Jeu)05:35
長髪のPPDA
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フランスの有料チャンネル、カナル・プリュスのサイト内の Le Mag du web(ウェブ・マガジン)の7/6の記事、「PPDA、自分の座を守るための最後の企て」。記事によると「週末、この画像がネットを席巻した」とのことだが……。 1チャンネルTF1の平日20時のニュースのキャスター PPDA [ペー・ペー・デー・アー]こと Patrick Poivre d'Arvor [パトリック・ポワヴル=ダルヴォール] は、超有名キャスターである。 だが、その彼が、1986年に TF1 に移ってきてから――その前10年間は2チャンネル Antenne 2 にゐた――、22年目にして去ることになった。今年の新年度、すなはち9月から、その座には Laurence Ferrari [ロランス・フェラーリ] が坐わるのだ。なぜ、いま、刷新人事なのか? これ、じつは、サルコジの息のかかった人事に反対したせゐとも云はれてゐる。なにしろ TF1 のオーナーの Martin Bouygues [マルタン・ブイグ] はマブダチ、総取締役会役員 (directeur à la Direction générale) の Laurent Solly [ロラン・ソリー] は元選挙副参謀てふ「サル公TV」なのだ。 さらに、後任のフェラーリは、元 TF1 のキャスター――出戻りである――だが、他ならぬサル公と付き合ってたてふ噂の人でもある。たしかに、サル公の好きさうなインテリ美女ではある。ちなみに、父親の Gratien Ferrari [グラティヤン・フェラーリ] は、元 Aix-les-Bains [エクス・レ・バン] 市長で、UDF(Union pour la Démocratie Française 仏民主連合)の代議士でもあった。 大阪のくいだおれ太郎は、くいだおれ閉店とともに旅に出たが、フェラーリの現在の職場でもあるカナル・プリュスの人気風刺人形劇 Les Guignols の司会者 PPDA 人形の行方や如何に?? | | |
★2008.07.08(Mar)07:03
日丸屋秀和『ヘタリア Axis Powers』(幻冬舎コミックス)
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ヘタリア Axis Powers
ニューヨーク在住学生・日丸屋秀和によるサイト「キタユメ。」内の1コーナーである国擬人化漫画「ヘタリア」――ヘタレのイタリア――の書籍化。「枢軸国」てふ副題からも判るとほり、日独伊三国軍事同盟時代のネタを中心に、ルネサンス時代から現代のバルト三国まで手広くあつかふ。早くから、腐女子の間でネタにされて来た。小生、今年の仏語の授業の一回目で、フランス兄ちゃんの絵をちょっと示したが、誰も反応せずがっかりである。発売されるや否や10万部を売ったてふが、ほんまかね? ちなみに、サイトでは「藩擬人化漫画」も描かれてゐる。 しかし、マリア・テレジアや織田信長は出てきても、ヒットラーもムッソリーニも松岡洋右も出てこない。出てきたらシャレにならぬゑぐさの露呈とならざるをえまいから、それは構造上の必然とはいへ、このてんにおいて、現実の歴史とはまったく切り離した「キャラもの」と割り切らねばならんであらう。 | | |
★2008.07.06(Dim)23:48
くらもちふさこ『駅から5分』1(集英社 クイーンズコミックス)
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駅から5分 1 (1) (クイーンズコミックス)
てふわけで、くらもちふさこである。『コーラス』連載のこの作品、単行本化までに2年もかゝってゐるが、そもそも不定期連載のうへ、途中、入院などもあったやうだ。 自選集を見ると、このひとの絵柄の変化がよく判るが、基本は主線の太線化であらう。くわへて、『いつポケ』の頃にも時折あらはれてゐた「枠線間に空間のない」コマ割りが、いつの間にか全体化し――BLの草間さかえがさうである――、その枠線じたいも太線化してゐる。このため、絵柄全体が黒っぽくなった。 オハナシの方は、花染町てふ架空の街を舞台にした短篇連作で、バルザックの「人間喜劇」のごとき人物再登場法がとられてゐる。一応、花染神社の息子で、弓道の達人、花染高校生徒会長――通称「会長」――のイケメン、圓城陽人(はると)君がキー・パースンのやうにも見えるが、この先いかに? | | |
★2008.07.05(Sam)06:57
日本文学案内サイト
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★2008.07.04(Ven)04:35
あさりよしとお『荒野の蒸気娘』4(ワニブックス GUM COMICS)
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★2008.07.04(Ven)04:32
中村光『聖☆おにいさん』1(講談社 モーニングKC)
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聖☆おにいさん 1 (1) (モーニングKC)
「セイント・おにいさん」と読む。20世紀末を無事に越えたイエスとブッダが、立川で風呂無しのアパートをシェアして、長期休暇を楽しんでゐるてふ設定の、脱力系ギャグ漫画。ふたりのなにげない日常がネタとなってゐる。たとへば、イエスは、mixiも――マイミクに、ゆださんてふ人がゐる――やってゐるし、1日1万hitを誇るドラマ評ブログ「いえっさのドラマンダラ!!」をやってゐる。ブッダは、シルクスクリーンでオリジナルTシャツをつくるのを趣味としてをり、ふたりの衣裳はたいていそのTシャツだ。扉絵で「仏顔×3」と書かれたのをブッダが着てゐるのだが、せんだっての雑誌連載でイエスが着てゐた「知らない×3」には笑ってしまった。もちろん、ペテロの故事にちなむ。 イエスとブッダのギャグ漫画といへば、かつて猫十字社の『黒のもんもん組』の中のエピソードにあったが、中村光のは『荒川』にも通じる「日常感」がベースとなってゐる。ただ、リクの「日常」と河原の住人たちの「非日常」が截然と分かたれてゐる『荒川』にたいし、存在自体が「非日常」であるイエスとブッダが、日常生活を送ることで、非日常と日常が渾然となってゐる点が新境地であらう。 | | |
★2008.07.03(Jeu)05:13
中村光『荒川アンダーザブリッジ』1〜7(スクウェア・エニックス ヤングガンガンコミックス)
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荒川アンダーザブリッジ 7 (ヤングガンガンコミックス)
『中村工房』終了と同時に2004年より連載開始、いまも続いてゐるギャグ漫画。『工房』とは異なり、なぜか荒川の橋の下に住むことになってしまった市ノ宮カンパニーの御曹司・行――後に、河童により「リクルート」、通称「リク」と名づけられる――と、その命の恩人で、行に代償を求められ「恋をさせてくれ」と答へた「ニノさん」――自称、金星人の女の子――との交際を中心に、河川敷に住む仲間たち――村長である河童、星、シスター、ステラ、シロさん、マリア、ラストサムライ、P子、鉄人兄弟らの「人間」や、タイハクオウムのビリー、女王蜂のジャクリーンらの「非人間」たち――との交流が描かれる。リクてふ「日常世界からの客人(まらうど)」が突っ込み役として固定してゐるため、ギャグのパターンは同じだが、河原の住人たちの非日常性が、多様な展開を可能としてゐる。 御曹司で、文武両道に秀でるオレ様キャラのリクの成長物語(ビルドゥングスロマン)ではあるが、謎に包まれたニノの背景が、そこはかとない切なさを漂はせる。なほ、各巻、巻末4ページにカラーの小品が掲載されてゐるが、これはギャグのないポエティックなテイストとなってゐる。 | | |
★2008.07.03(Jeu)05:13
中村光『中村工房』1〜3(スクウェア・エニックス GANGAN WING COMICS)
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中村工房 3 (3) (ガンガンWINGコミックス)
近頃気になる漫画家のひとり、中村光。2001年のデビューだが、当時、17歳。すでに中3で、漫画家になることを決意してゐたてふ。伊豆の陶芸家の娘さんで、読者プレゼントにマグカップを焼けと、父親から命ぜられるネタが出てくる。現在は東京在住のやうだ。 さて、中身はといへば、6ページほどのギャグの集成で、連続モノになってゐるのもあるが、一回こっきりのものもある。登場するキャラは多く、数回登場するキャラもゐて、後に『荒川アンダーザブッリジ』にも登場する河童や羊飼いのお姉さん、星、シスターなどがさうである一方、第3巻の表紙まで飾ったにも拘らず、『荒川』には現れない、鉢植ゑのウサギのごとき謎の生物や横田金次朗てふキャラもゐる。 傾向はシュール系ギャグであり、突っ込みの勢ひで落とすことも多いが、基本は「アホらしさ」の笑ひと云へよう。
公式サイト:http://www.nakamurahikaru.com/ | | |
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