★2007.03.28(Mer)07:02
にゃんにゃん分析
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★2007.03.26(Lun)07:38
リュテスの会
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 | 昨日は、大阪市立大学フランス文学会、通称「リュテス」の総会ならびに特別研究発表会。研究発表会は予想通りダダ押しに。結局、オーガナイザでもある我が師匠が、自分の発表を超短縮して予定時間少し押しにとどめた。 懇親会は、この3末でオーナーのマダムが引退なさる夏爐にて。無理を云ふて日曜に開けていただき、貸し切りパーティとなった。最後は、その奥さん――昭和4年のお生まれださうで――に拍手してお開き。
(師匠と大先輩たち)
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★2007.03.25(Dim)05:41
山田章博『BEAST of EAST――東方幻暈録――』3(幻冬舎 バーズコミックスデラックス)
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『BEAST of EAST 3 (3)』
かつて大学の同級生の耽美好き女子に教へられた山田章博。そもそもイラストレータだったが、昭和SFテイストに溢れた『ラスト コンチネント』やら、お笑ひテイストに溢れた『紅色魔術探偵団』などの漫画もある。 この『ビースト・オブ・イースト』は、900年頃の平安京を舞台とした伝奇漫画。そもそも剛霊無(ゴーレム)やら晩屍衣(バンシー)やら互武倫(ゴブリン)やらの西洋妖怪が日常的に存在するハイブリッドな世界である。敵は日本を戦乱の世に変へんとする九尾の狐の化身・玉藻の前。立ち向かふのは傀儡小屋の主にして盗賊・鬼王丸。したがふ仲間は、カラクリ発明家どくとる――本名リーゼンドルフ。「夜の乙女」から闇の口づけを受け、700年を超えてなほ生きる身となってしまった。人の生き血を呑むと若かった頃の姿に戻る――、怪力のアーマッド――元アラビアの兵士――、獣人のマレー――シャムの山猫族。アルコールによって獣の姿に化身する。ふだんは傀儡女(くゞつめ)として裸踊りを見せてゐる――、魔剣を操る立烏帽子(たちえぼし)――別名・鈴鹿御前。鈴鹿の山の魔鍛冶衆。操る剣の名は「大通連」――、傀儡小屋の前の主・賀茂光栄(かものみつよし)――安倍家と並ぶ陰陽師の家の出――、陰陽頭・安倍晴明。さらに、平将門、藤原純友も登場だ。物語は、玉藻の前が将門をかどはかして、愈々戦乱の世の幕開けかてふところまで。 ちなみに、このシリーズが連載されてゐる『コミックBIRZ』は、出版社を転々とさせられた流浪の雑誌である。そのせゐで、この本、第1巻(1998年)はスコラのバーガーSCデラックス、第2巻(2000年)はソニーマガジンズのバーズコミックス、今回は幻冬舎のバーズコミックスデラックスと、三冊とも全部違ふ版元の珍しいことになってゐる。 | | |
★2007.03.24(Sam)06:43
卒業式2007
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 | 昨日は卒業式と学位記授与式と教育促進支援機構表彰式と懇親会。卒業式はこのところ定番の城ホール。学位記授与式以降も、不動の田中記念館。ぼくは、学位記授与中は、同時におこなふ『フォーラム人文学』配布の監督役で、ずっと上手袖に張り付きであった。卒業・修了生たちは、下手からスタートして、中央で学位記を受けとり、上手で諸々を受けとって舞台を降りるので、上手袖に向かって歩いてくるため、最後は、すぐ眼の前まで接近するのだが、袖の中にゐるぼくに気づく子は少ない。誰かゐるなと思ってゐるのか、それともそもそも見えてないのであらう。 表彰式では、司会進行。「書評賞受賞書評」てふセリフを嚙んだのが痛恨であった。なにぶん、ちょっとくたびれてたとこへ、進行が押し気味で焦ってゐたのだ。なほ、今年の授与役は、松村会長。先生ご自身も卒業の身なので、最後のお勤めでもある。 さて、懇親会。数名の生徒と写真を撮る、てふか撮られる。この春から高校教師になるマイミクにゃおにも話したことだが、毎年のことゝはいへ『ハチクロ』――羽海野チカ『ハチミツとクローバー』第5巻――の丹下先生のコトバが身にしみるではないか。
なぁ花本君 教師になんぞなるもんじゃないな どんなに可愛がっても相手は卒業してゆくばかり 見送るだけの人生じゃ 卒業してしまえば次に会うのは何年も先 ヘタすりゃ二度と会う事もない いったい教師というものは……永遠に卒業できない学校の亡霊のようなものなんだろうか? | | |
★2007.03.23(Ven)05:47
『ふらんす』4月号(白水社)
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 | 毎年分厚い『ふらんす』の4月号は、今年も恒例のCD付き。特集ん中で「インターネットでもフランス語」てふ雑文を書いとりま。 | | |
★2007.03.22(Jeu)06:39
マリー=ホール・エッツ『わたしとあそんで』[与田準一](福音館書店)
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『わたしとあそんで』
『もりのなか』などで有名な Marie Hall Ets (1893–1984) はアメリカの絵本作家。Play With Me(1955) はコルデコット賞の優秀賞を取ったらしい。日本の初版は1968年。おそらく多くのひとが読んだにちがひあるまい。女の子が原っぱへ遊びにいって、イキモノたちに「あそびましょ」といふが、みんな逃げちゃって、しゃうがないから、池のはたに坐わってると、みんなが戻ってきてメデタシメデタシてふオハナシである。つねに笑てはるお日ィさんがすばらしい。 翻訳の与田準一は、かの「ことりのうた」――♪ことりはとってもうたがすき、ってやつである――の作詞などで有名な児童文学者。ちなみに、長男・準介は、「ブルー・シャトウ」や「ブルーライト・ヨコハマ」や「亜麻色の髪の乙女」の作詞家・橋本淳――さらに、その息子が MISIA などのプロデューサー与田春生らしい――である。さらにいふと、この橋本淳、「銀河鉄道999」などのアニソンの作詞も手がけてゐるが、小生的には、なんといふても「炎のたからもの」。さう、かの「ルパン三世 カリオストロの城」の主題歌である。 | | |
★2007.03.21(Mer)06:07
先生たちの卒業式
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 | 昨夜は恒例の教員懇親会。去りゆく人々と最後の歓談。なにしろ半ダース、全体の5%が定年・割愛で去られるのだ。ぼくが学生だったころには109名だったのが、遂に79名である。 それにつけても残念なのは、個人的に人事で大層お世話になった毛利先生のマジック・ショーが見られなかったこと。先生はちゃんと準備(!)されてきてたといふのに……。
(次期研究科長から現研究科長への花束贈呈式。バトンを渡す前に、マイクを渡される栄原研究科長)
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★2007.03.19(Lun)03:27
大沢在昌『ニッポン泥棒』(光文社 カッパ・ノベルス)
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『ニッポン泥棒』
主人公は、なんだかよくわからん「世界を変へ得るソフト」の「鍵」に知らぬ間に指名されてた64歳無職の元商社マン。ネットワークのネの字も知らない男が、ある日突然、さまざまの人間に押しかけれられ、とんでもないソフト争奪戦に巻き込まれたことを知る。現代ニッポンに対する大沢節もあり。 | | |
★2007.03.18(Dim)04:27
江國香織『ぬるい眠り』(新潮文庫)
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『ぬるい眠り』
1990年に河出書房新社から出た文藝ムックがあった。巻頭は作詞家・松本隆の短篇に大島弓子が挿絵――しかもカラー――をつけた「風邪をひいたアリス」。他に、めるへんめーかーや坂田靖子らの漫画家が漫画を載せ、長野まゆみは自ら挿絵をつけた「絵本・少年アリス」を載せ、小林麻美――あの、田辺エージェンシーの社長と結婚引退した女優だ――や松本小雪――あの「夕焼けニャンニャン」の司会やってた不思議少女。1986年くらゐには糸井重里とつきあってたらしい――が小説を載せてゐる。巻末(トリ)は堀田あけみの「ボクの憂鬱」――双子の姉視点から描かれたこの作品には、後に妹視点の「彼女の思惑」が追加されることになる――。雑誌の名前は『アリスの国』。80年代サブカルの尻尾てふか、バブル期のアダバナてふか、「高級少女文芸誌」と銘打ったこの雑誌は、VOL.1 と書かれてゐたにも拘らず、第2号以下をみることはなかった。このなかに、江國香織は「ゆるい眠り」てふ短篇を書いてゐる。デビューが1987年だから、まだ最初期といってよいであらう。 これを改題した表題作他、単行本未収録作を集めた、文庫オリジナル短篇集。とりわけ、帯にも書かれてゐる「きらきらひかる」――小生も贔屓だ――の続篇「ケイトウの赤、やなぎの緑」がウリのやうだが――たしかに、笑子、睦月、紺くんのその後が描かれてはゐるが、視点が異なる。しかも、すごいことになってるし――、作品的には、やはり「ぬるい眠り」であらう。他は、まあ、手すさびといった趣きの作品群、単行本未収録もむべなるかな。 | | |
★2007.03.18(Dim)04:14
西島大介『恋におちた悪魔――世界の終わりの魔法使いII――』(河出書房新社)
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★2007.03.18(Dim)04:10
事務局引き継ぎ
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 | 2年任期で引き受けたLET関西支部の事務局長、昨年度末で任期切れのはずだが、4ヶ月を余分にやって、昨年8月末にK先生にバトンタッチした。だが、こちらもクソ忙しく、バトンを渡しきれず、一緒に持って走るハメに。じつはまだ完全に済んでないのだが、漸く、荷物の殆んどと、支部の印鑑を渡しに、K先生の勤務校まで行ってきた。 段ボール6箱の荷物を持ってったのだが、しかし、そこにエレヴェータはなく、手で運ぶと息が切れ、汗だくである。とまれ、少しは気が楽になったといふものだ。
(K先生の勤務校のそばから。南河内の山並みが広がる)
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★2007.03.17(Sam)07:58
古屋兎丸『彼女を守る51の方法』2, 3(BUNCH COMICS 新潮社)
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★2007.03.16(Ven)06:22
入学手続きと新歓キャンプ勧誘
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 | 3/15は前期日程合格者の入学手続き日。10時から12時までは受験番号の奇数番号者、13時から15時までは偶数番号者が入学金を為替で持ってきて、入学許可証他の書類一式を持って帰る日である。本館地区には勧誘のためのサークルのブースが並び、春休みの大学が大層にぎはふ。 1号館の講堂には各学部のブースが並び、そこで書類が交付されるのだが、今年は、教育促進支援機構もそこに参加、『フォーラム人文学』第4号――また分厚くなった――を配布がてら、新企画、4/7~8に開催の、「新入生歓迎キャンプ」の宣伝を行なふためである。これは教育支援チームの企画で、哲学のTくん、仏文のDくん以下、社学やら世界史やらの2回生たちが宣伝役として参加してくれた。小生は監督役であったが、結局、入学許可証をセットするなど、文学部の事務を補佐することに。 しかし、この新歓キャンプ、小生にしてみれば、われわれが学部生時代に、学生自治の名残として残存してをり、それなりにさまざまの活動を行なってゐたクラス活動・学部活動のなかで毎年開催されてゐた、学生主催の文学部新歓合宿の復活といふことになる。じつは生協も新歓合宿をやってをり、いちおうの仁義は切っておいたが、文学部ブースのすぐ横の生協ブースにゐた専務理事は、復活を喜んでくれてゐた。なにしろ、彼は小生の3つ後輩、日本史の卒業生なのだ。 つぎは27日、後期日程合格者の手続き日。最終、4/2の合格者向け学部説明会の場で、申し込みブースを出す予定だ。
(文学部の前期日程合格者、1部2部を合はせて約160名の一人々々――ときには、代理人のお母さんとか――に説明するスタッフたち。H君なぞは、人と話すのが苦手だと云ひつゝ、大層克己心にあふれ、果敢に説明にチャレンジしてゐた。ちなみに右手が生協のブース)
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★2007.03.13(Lun)00:26
後期日程2007
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先週の金曜に、前期日程の合格発表があったと思ったら、もう後期日程の試験である。文学部は小論文。2時間。お題は田川建三の「人は何のために生きるのか」。もちろん、そんなストレートな内容の文章ではない。さて、どんなことを皆んな書いたのか。欠席率は3割ほどだったさうな。 | | |
★2007.03.12(Lun)01:43
楽日
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 | 昨日もさまざまのお客さんにお越しいただいた。ありがたいこってす。公演関係者もお手伝ひさん方も、みなさんありがたうござんした。 トータル200余名。ちなみに、安部さんの作品は、しばらく見られないかも。
(海底をイメージした美術は、久太郎氏の作品)
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★2007.03.11(Dim)06:51
二日目とセリフ
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 | てなわけで、本日が楽日である。昨日は、マチネ、ソワレとも56名のお客様、土曜の方が多いとふんでゐるのだが、はたして今日・日曜は何人いらっしゃるのやら? いらしてくだすった方には感謝々々。 しかし、ゲネ1回、本番2回の都合3回やると、結構草臥れるものである。そして、本番になると、這入ってるはずのセリフがあやしくなる。昨日は、袖での出番待ちの最中に、ふと次のセリフを脳裡(?)に再生した途端、アヤシクなった。稽古中は、ほゞオートマチックに次のセリフが出てくるのだが、本番の袖てふそれまでにない環境に置かれた途端に、確実に「記憶」されてたセリフが疑はしくなるのだ。これもやはり、コトバの「現場性」の証左であらう。 さて、本日も2回公演。バラシもある。もう終はりなのだ。昨日観てくれたY劇体のKちゃんは、「NGRでないNGRを観てしもた。面白く感じてシマッタ」と云ふてたが、そんな芝居です。 | | |
★2007.03.10(Sam)08:17
初日
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 | 愈々初日。といふても、明日で楽日なのだが。今回は仕込み日程が、ふだんより半日多いので楽勝。ゲネラル・プローベも2回できる予定。客席キャパは60程度だが、はたして何人いらしてくださることやら。今からでも充分間に合ひますので、どうぞベルタの向かひあたりまでご足労くださいまし。 (写真はロクソドンタブラックへの通路となる路地。私道らしいが、南仏料理屋さんなどもならぶ。向かうに見えるのはあべの筋)
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★2007.03.06(Mar)06:52
浪花グランドロマン第27回公演
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てなわけで、まへにチョロっと書いた芝居の宣伝。現状からの脱出を夢みてクヨクヨ、ウロウロするニンゲンの姿を描く。もちろん、我々が演ずるので、少年少女ではない。ちなみに「変はらうとすること」そのものがテーマだ。
------------ 「海色のトランク」
(LOXODANTA FESTIVAL 2007 参加)
日時●2007年3月10日(土)15:00, 19:30 11日(日)13:00, 17:00 (いずれも1時間前から整理券配布)
場所●ロクソドンタブラック(http://www.thekio.co.jp/loxodonta/) (545-0052大阪市阿倍野区阿倍野筋2-4-45 TEL:06-6629-1118。天王寺駅から徒歩5分、谷町線阿倍野駅から徒歩1分。あべの筋から「田園」の角を東に入る)
料金●通常料金 当日:\2,500 前売:\2,000 割引料金 大学生・専門学校生: \1,500 中学生・高校生:\1,000 65歳以上:\1,000 Physical or Mental Challenged(心身にハンディキャップのある方)\1,000
花の役者陣■高岡 美香 カヤノ・マドカ(妹) めり カヤノ・マリナ(姉)
菊池 裕子 コサカイ・ミヅエ(姉妹のおさななじみ) サトー エミ ゴトーさん(M-1を目指す主婦) つげ ともこ クドーさん(M-1を目指す主婦) 福島 祥乃介 クサカ・ヒロオ(製薬会社の研究員)
森岡 さかえ チサト(不意に現れる) 中谷 仁美 トランペットの娘(公園で練習をする)
月の裏方陣■作 安部枕流 演出 浦部喜行 照明 鬼無桃犬郎 音響 あなみふみ(ウイングフィールド) 舞台美術 久太郎(鉄人王者) 宣伝美術 檜垣平太(neutral) 制作 浪花グランドロマン
問い合わせ■浪花グランドロマン(Tel & Fax 072-259-0594, info@ngr.jp) チケット申込●浪花グランドロマン(ticket@ngr.jp)
公式サイト●http://www.ngr.jp/ | | |
★2007.03.06(Mar)06:24
古屋×乙一×兎丸『少年少女漂流記』(集英社)
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『少年少女漂流記』
古屋兎丸とライト・ノヴェル作家・乙一が、深夜のファミレスで打ち合はせ、乙一がプロットを書き、兎丸が作画したコラボレーション作品。中間小説誌『小説すばる』に連載された。読み切り短篇集だが、最後に、ひとつの世界に収斂する。 主人公はすべて高校生。集団にとけ込めない「はみだしっこ」たちの、それゆゑの妄想=幻想風味のハナシが多いが、他の作品も、作者たちが巻末対談で語るやうに、十代少年少女の自意識過剰と、そこからくる「イタイ妄想」が基本となってゐる。作者たちは、十代の世界を描く理由に、「未成熟」ゆゑの想像力の介入可能性を挙げてゐるが、じつはこゝに描かれた少年少女の世界は、大人になっても――そして老人に到るまで――、該当する普遍の世界であらう。ニンゲンとはクヨクヨし、右往左往するイキモノなのだ。 | | |
★2007.03.03(Sam)07:58
追ひコン
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 | 3/1はわがコースの追ひだしコンパ。ウチは予餞会みたいなものがないので、これが卒業・修了生とゆっくり話せる最後の機会である。にも拘らず、主賓の彼らの出席率は半分ほど。3回生の宴会係が卒業・修了生の空き日程に合はせたはずなのにである。くはへて2回生はゼロ。コースの求心力てふのは、かくも下がってゐるのだらうか。センセーとしては、みんなの卒業・修了には諸々骨を折ってきてゐるので、それはそれで寂しいものだ。もちろん、骨を折ることで給料もらってるんぢゃないかと云はれゝば、それはさうなのだが、大人数の人気コースに比して、小所帯のコースの良いところは親密さ(アンティミテ)にあると考へてきただけに、プチ・ショックではある。まあ、ケウシなんて、人生の最初の方でちょっと交叉しただけの存在、今後どんどん比重を失ってはゆくのだが。
(二次会のカラオケで、日本の歌を熱唱する留学生たち) | | |
★2007.03.01(Jeu)07:27
川原由美子『観用少女――夜香――』(朝日ソノラマ)
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『観用少女――夜香――』
単行本未収録作もあはせて、2巻本の愛蔵版に再編成された『観用少女(プランツ・ドール)』シリーズ完全版。帯の紫も美しい、これは2巻目。1993年から2001年にかけて『ネムキ』――元は『眠れぬ夜の奇妙な話』。諸星大二郎の「栞と紙魚子」シリーズも連載されてた――誌上で書き継がれた13作を編年体で収録。ちなみに未収録だったのは、「ムーンライト・シャドウ」――宝石屋さん再登場――、「神様の杯」――絵描きさん再登場。バイト店番してるし――、「夜来香」――彼が見たものは……――、「御喋りな墓標」―― 『ネムキ』別冊のメイド特集号に再録されたことあり。子どもメイドさんが主人公――、「冬の宮殿」――現在のところの最終作。収録にあたって、改稿部分あり――の5作だ。 この連作は、そもそもプランツちゃんを巡る人間たちの姿さまざまを描くものだが、この巻にはプランツちゃんの役割にひとひねりあるものが集められてゐる。プランツのあつかひに些か残念感があるものゝ、作品の結構としては「御喋りな墓標」が贔屓。切なさでは「ミッシング・ドール」。 さて、このシリーズ、男子は「育っちゃった」プランツちゃんに愛される夢をいだくやうな気もするが――くはへて「父性」も?――、女子はどのあたりに想ひ入れを持つのであらうか。おほよそ「お人形遊び」においては、子どもが母親を演ずるだけではなく、お人形に子どもとしての自らを投影するてふ、謂はゞ「認識視点の二重化」が行なはれてゐると思はれる。となると、プランツちゃんのやうに愛されたいてふ気持ちもあるのかしらん? | | |
★2007.03.01(Jeu)07:25
吉田金彦編『日本語の語源を学ぶ人のために』(世界思想社)
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『日本語の語源を学ぶ人のために』
学部から大阪市立大学のワタクシであるが、シダイ文学部を選んだのは、そもそも国語学がやりたいがためであり――当時、大阪市立大学国文には、塚原鉄雄、井手至てふ国語学の二大碩学がいらしったのだ――、国語学がやりたくなったのは、語源に関心があったからであり、語源に関心ができたのは、ニキビ小説を書いてるときに、文字づかひを如何にするかを考へすぎたからである。たとへば、「かをり」は「香り」と書くのが普通だが、岩波古語辞典によれば――てふことは、つまり、大野晋説によれば――、語源的には「気折り」であるから、さう書かねばならんのだが、字面が気に入らないので「香靡り」と書いたりしてゐたのは、まったくそのせゐに他ならない。たしか新聞の告知で知った、吉田金彦先生――当時は大阪外大教授――主催の「語源研究会」を聞きにゆくやうになったのは1981年、高校2年のことであった。この研究会、第2回には、かつて「日本語のレプチャ語起源説」で一世を風靡した――そして否定された――故・安田徳太郎博士が車椅子に乗って登場、なほレプチャ語起源説をとなへられたことゝ、参加者が、あたかも藝能人かパンダのごとく写真撮影してゐたのが忘れられない。 そんなぼくが、なぜ仏語屋になったかはまたの機会に書くとして、本書は、日本語語源研究にかんする研究のアソートである。ちなみに、大野晋先生も、この3月一杯で、大阪市立大学国文をご停年になられる毛利正守先生もご執筆になってゐるぞ。 | | |
★2007.03.01(Jeu)07:25
工藤庸子『宗教vs.国家――フランス〈政教分離〉と市民の誕生――』(講談社現代新書)
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『宗教VS.国家』
大統領選を控へ、さらにかまびすしいフランスの「ライシテ」laïcité(非宗教性)だが、19世紀フランスの近代小説創始者ギュスタヴ・フロベールの専門家であった東大名誉教授(現在は放送大学教授)は、この大革命の産物、すなはち、「宗教」が「市民道徳」に取って代はられるてふ事態が、19世紀から20世紀初頭にいたる歴史の中で、いかに実現されていったかに目を付けた。取り上げられてゐるのは、『レ・ミゼラブル』のヴィクトル・ユゴー、フェリー法で知られるジュール・フェリーなど。 | | |
★2007.03.01(Jeu)07:11
原野昇編『フランス中世文学を学ぶ人のために』(世界思想社)
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『フランス中世文学を学ぶ人のために』
同じ森門の後輩、小栗栖等・和歌山大学助教授からの献呈本。ありがたう! かつて仏文の三悪のひとりに数へられた小栗栖君も、いまや立派な博士さまである。そんな小栗栖君他、日本のフランス中世学者大集合の観のある本書、仏文畑の人間なら目を通しておきたい。仏文の人は、335 で disponible。 | | |
★2007.03.01(Jeu)07:08
及川健二『ゲイ@パリ――現代フランス同性愛事情』(長崎出版)
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『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』
かの「オカマの」東郷健とともに本を出したこともある及川健二の、ゲイ・レズにかんするルポ。現パリ市長のベルトラン・ドラノエ Bertrand Delanoë(社会党)がカミング・アウトしたゲイなのは周知の事実だが、それがスキャンダルでもなんでもないのがフランスてふ国である。やはりゲイであゐるパリ市の文化担当助役――パリ市議でもある――のクリストフ・ジラール Christophe Girard 他、多数のゲイ・フレンドリーな政治家たちのインタヴューを収録。 | | |
★2007.03.01(Jeu)07:06
今田絵里香『「少女」の社会史』双書ジェンダー分析17(勁草書房)
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『「少女」の社会史』
そもそも、「岩波少年文庫」が示すやうに、「少年」には男女が含まれてゐた。そこから、「女」が「少女」として括り出される――要するに排除される――経緯を、戦前の雑誌を分析することで明らかにする。京大の人間・環境学で学位を取った論文を纏め直した本。 | | |
★2007.03.01(Jeu)07:04
トーマス・M・ディシュ他『狼の一族』[若島正・編訳](早川書房)
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『狼の一族』
早川の新装版・異色作家短篇集の第18巻。この「異色作家短篇集」は、1960年代に全18巻で出てゐるが、今回のは、その新装版てふことになる。だが、今回、第18巻を全面改訂し、2巻を追加、全20巻となった。この最後の3巻は、「アメリカ篇」「イギリス篇」「その他篇」からなるアンソロジーで、編者は、かの若島・ナボコフ・正・京大文学部教授である。若島先生が掲げた原則は、「奇妙な味」と「本邦初訳」。かくて、我が国に、また「異色」の短篇集が増えることゝなった。これはそのアメリカ篇。 | | |
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