黒猫亭舊館
黒猫亭主人謹製藏書録・贅言他
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2006.12.31(Dim)02:08  川原由美子『観用少女――明珠――』(朝日ソノラマ)
観用少女【完全版】(1)

観用少女【完全版】(1) 1992年から描き継がれてゐる人気漫画。ミルクと砂糖菓子と愛情で育つ「観用少女(プランツ・ドール)」――基本的に幼女の姿。しかし、失敗すると大人に育ったりもする。無論、そっちの方がよいてふ人も多いであらう――。慥かに美少女ぞろひのプランツちゃんたちの笑顔は魅惑的であるが、これは、そのプランツたちを巡る様々な人間模様が中心のオハナシ群である。プランツは気に入った人に会ふと「覚醒」し、他の人間には目もくれなくなり、売り物としての価値が下がる、てふ設定がウマい。これがために、プランツに気に入られた人間には、「絆」てふ大きなシガラミ=宿命が生ずるのである。プランツから得る至福と労苦は表裏一体であり、これはまさに人生そものもの譬喩(メタファ)となってゐるわけだ。
 ちなみに、コミックスは、現在、全て文庫本化済み。小生、かつてカシロスくんから貸してもらって読んではゐるのだが、改めて読むと、感慨も新たである――「宝石姫」とか「天使の役作り」とか――。今回の愛蔵版は、カラーページ収録と、新規彩色、未収録作2篇収録がウリ。ちなみに、2巻本で、下巻は来年発売だ。
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  • カシロス (2007/01/28 15:45)
    やっとネットをつなぎました。毎日遅くて朝早いもんで、週末しかネットできてませんが・・・。完全版でてるんですね!観用少女はかなり読み返してます。あんまりマンガを読み返さない方なんですが。未収録作入ってるなんて・・・買おうかしら。(部屋に置く場所がないが・・・)
  • 黒猫亭主人 (2007/01/31 05:07)
    単行本未収録の5作のうち、「オーロラ姫」「ユメデアウマナザシ」が収録されとります。愛蔵版なので、判型は大ぶり。
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2006.12.31(Dim)02:02  串田秀也『相互行為秩序と会話分析――「話し手」と「共−成員性」をめぐる参加の組織化――』(世界思想社)
相互行為秩序と会話分析―「話し手」と「共‐成員性」をめぐる参加の組織化

相互行為秩序と会話分析―「話し手」と「共‐成員性」をめぐる参加の組織化 会話分析若手俊英、串田秀也大阪教育大助教授が、京大の人環に出した博士論文の書籍化。ベンキョーさせて戴いてをります。
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2006.12.31(Dim)01:28  舞城王太郎『SPEEDBOY!』講談社
SPEEDBOY!

SPEEDBOY! 講談社がラノベと漫画をボーダレスでのシリーズとして出した BOX シリーズ裡の一冊。背中にふさふさと毛の生えた成雄くん――と云へば、勿論『山ん中の獅見朋成雄』だが、別人であらう――が主人公の、連作。だが、共通してゐるのは「音速を超えるスピードで走れるやうになった数名がゐる」てふことゝ、その名前が共通してゐるだけで、それぞれは別世界を構成してゐると読める。音速を超えられるランナーたちは、一様に「白い玉」が先行してゐるのを見、それを追ひかける。だが、その中に待つものは……。
 ちょっとライト過ぎる感もあり。
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2006.12.12(Mar)10:30  H & M
 下のサイトによれば、フランスではお世話になったスウェーデンの安服屋 H & M (Hennes et Mauritz) が、2008年に原宿に進出するらしい。スペインの安服屋 Zara はすでに原宿にも梅田にも進出済みであるが、先の家具屋 Ikea に続き――もっとも、いちど合弁会社として進出してはゐたらしいが――、欧州では有名なスウェーデン勢の上陸である。ニポンの人々にどこまでウケるのかしらん?

http://www.lsa.fr/article/page_article.cfm?nrub=216&idoc=86483&navartrech=2
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  • noro (2006/12/12 12:50)
    最近ヨーロッパから続々とお店が来ていますよね。イギリスのTOP SHOPも来たみたいですし、French Connection(FCUK)もお店あるし、Nextもたしかあっちのお店だったような。H&MとIKEAの店舗がどんどん増えるといいなぁと希望しております。
  • 黒猫亭主人 (2006/12/12 23:31)
    市場は益々グローバってゆきますでせう。それも、高級ブランドではなく、安服屋さんや安家具屋さんてふ点がポイントですな。フランスの Tati [タチ] が上陸するのはいつの日か。
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2006.12.11(Lun)23:53  A. GUTMAN & G. HALLENSLEBEN Lisa et le Père Noël(Hachette)
Lisa et le Père Noël

リザとサンタクロース ガスパールとリザのシリーズ最新作は、クリスマス商戦用。リザがサンタさんの家に行ったことがあると云ひはって、そのときのことを話すてふ内容。もちろん、作り話だが。なほ、大型判の特別ヴァージョンである今回は Catastrophe ! なしだ。
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  • カシロス (2007/01/28 15:50)
    ガスパールとリザのグッズも最近よく見ます。(前から売ってたけど気づいてなかっただけ?)お弁当箱がほしくて仕方ないです。買うべきか。。。無駄遣いしすぎなので自粛中。
  • 黒猫亭主人 (2007/01/31 05:10)
    ガス・リザはけっこう前からヒット中。かつて阪急梅田のショーウインドウがガス・リザでしたね。でも、2004年末に本家フランスの大手書店で絵本を探してみたけど、全然見あたりませなんだ。日本のヒットは、世界で突出してるのかも。
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2006.12.11(Lun)23:50  宮島喬『移民社会フランスの危機』(岩波書店)
移民社会フランスの危機

移民社会フランスの危機 フランスの移民問題にかんしては、残念ながら今年急逝された梶田孝道・元一橋大学教授とならぶ社会学の巨頭、法政大学の宮島喬(たかし)教授が、書き下ろし的にまとめられた一書。研究書ではないと断はられてゐるが、内容充実の概説書である。
 「平等」をめざすのが「共和主義モデル」であったが、問題はその「平等」の概念であり、それこそ再考されねばならないとする。なるほど一度は違憲とされながらも実施に到った「パリテ」parité ――選挙において、政党は、候補者を男女同数にせねばならないてふ制度――は、一種のアファーマティヴ・アクション Affirmative action であるが、それは「平等」の内実を問ひ直すことでもあった。「移民」他のマイノリティにたいしても、這般の消息は同じと云ひ得よう。畢竟、硬直したドグマ主義こそが、乗り越えられねばならぬわけである。
 とは云へ、現実社会における情緒的共同体の感情論てえのは、タチが悪ぃやね。
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2006.12.11(Lun)23:48  ドニ・ディドロ『運命論者ジャックとその主人』[王寺賢太・田口卓臣](白水社)
運命論者ジャックとその主人

運命論者ジャックとその主人 18世紀啓蒙主義者にして、『百科全書』の編集長(ダランベール d'Alembert と共同編集だが)でもある Denis Diderot の書いた長篇物語。途中に語り手が現はれて、読者に向かって語りかけるてふ、「お荷物小荷物」的――つまり、脚本の佐々木守が影響を受けた、ジャン=リュック・ゴダール的――手法のご先祖さまでもある。かつて、小場瀬卓三大先生の手になる翻訳が存在したが、このたび、東大出身若手碩学の手により新訳となった。ちなみに、例のすーちゃんが、「ひょんなことから、訳稿が手に這入って」とか云ふてたヤツである。
 表紙絵はよしながふみ。すーちゃんは、プルースト漫画を描かせたいと云ふてゐたが、こんなとこで登場であった。
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2006.12.10(Dim)06:31  文林会
 昨日は、恒例の「文林会」。隔年に開かれる元文学部教員の会で、所轄は庶務委員会。現役教員は――殊に、教室のOBの――お話相手として参上することになる。大体は教室代表の務めであるが、小生もなんやかんやで3度目の出席となる。場所はまつむらなので、雨中をチャリで向かったが、途中、四天王寺の石畳で前籠が崩壊、ついでに四天王寺さんの中で出口を見失ひ、遅参する羽目になってしまった。
 先輩教員の方々の中で、初参加は、東京よりお越しの楜澤先生(英文)――18世紀つながりで、鈴木田さんのことをご記憶でいらした――と元学部長の増田先生(国文)――武庫女も御定年の由――。最長老は米寿の直木先生(国史)であった。栗山先生(英文)、深見先生(独文)はともに前立腺をお取りになったさうだが、深見文林会々長は、前立腺を取ると若返るのでオスヽメであると、例の調子であった。
 仏文では、田辺保先生がご参加。横に坐わってお話させていただく。喜寿を迎へられる先生、一時ご病気だったせゐかお痩せではあったが、今年も3冊の本を出していらっしゃる。一冊はライフ・ワークのパスカルについてゞあるが、いやはや相変はらずのお仕事量、敬々服々のいたりである。朝カルの講座もお続けで、最近は「フランス思想の流れ」のをお話になってゝ、これがまた、盛況なのださうだ。これに関連して、日本でデリダやナンシーを語る人々に、デカルトやパスカルの教養が缺けていると仰有り、さらに raison を何と訳すかてふ宿題をいただく。「理性」なんて訳したら、その時点でアウト、さまざまの年齢層すべての腑に落ちる訳語を考へよてふわけだ。如何にも田辺先生らしい宿題であらう。皆さん、どう訳されるであらうか?
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2006.12.07(Jeu)10:48  France 24
 メモ。
 
http://www.france24.com/live/index_FR.html

 2006/12/06、例の、CNN やアルジャジーラの向かうを張った国策テレビ France 24 がスタートした。ネットでライヴ放送が見られるやうだ。残念ながら、帯域のせゐかスムーズではないが、これで24時間仏語漬けになれるのかしらん。
 取り敢へず、仏英バイリンガルでスタート、2008年にはスペイン語とアラビア語が加はってクワドリンガルになるらしい(記事によっては、2007年にアラビア語、2009年スペイン語とも)。
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2006.12.02(Sam)06:00  千野帽子『文藝ガーリッシュ――素敵な本に選ばれたくて。』(河出書房新社)
文藝ガーリッシュ 素敵な本に選ばれたくて。

文藝ガーリッシュ    素敵な本に選ばれたくて。 俳人・千野帽子(ちの・ぼうし)による日本文学作品案内。かつての「女學生」テイストの語り口で、女学生をはじめとするさまざまなヲンナノコたちの活躍する「スヰート」な古今の小説を、尾崎翠から福島メグミコにいたるまで――もちろん男性作家の作品もあり――、見開き2ページで紹介してゆく、著者曰く「セレクトショップ」。著者はぼくとほゞ同い歳であるが、よくもまあ、色々読んでらっしゃる。感服。
 ちなみに、この方、関西学院大学商学部助教授で、クノーなんかがご専門の岩松正洋さんらしい。mixi に「文藝ガーリッシュ」のコミュを立てたことが、連載のきっかけになったやうだ。せんだっての仏文学会関西支部大会にもいらしてたやうだが、面識を得るには到らず。丁度、この本、持ってたんやけどね。
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2006.12.02(Sam)05:41  よしながふみ『大奥』2(白泉社ジェッツコミックス)
大奥 (2)

大奥 2 (2) 昨年10月から1年ちょいでの刊行。月刊誌『メロディ』に断続掲載の5回分で一冊となってゐる。
 今巻は、前巻ラストにおける右筆・村瀬の「三代家光公も元は男子」てふセリフの詳細を語るハナシ。しかし、今回も、オハナシの中心は大層な美形で、公家の息子・万里小路有功(までのこうじ・ありこと)――都人なのだが、京言葉はちょっとヘン――だ。にしても、若紫は不憫よなう。 
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