巴里便り

L'Ile Saint-Louis 篇

(2000/08/16-20)


2000/08/16
 天氣の良ければ、前囘より約二週間振りにて「フィリップ・オギュストの城壁跡巡り」を敢行。今囘は我が町サン・ルイより始めて、北側の半分を辿る。
今囘の撮影地點 プルティエ通り バルボーの塔跡
フィリップ・オギュストの城壁(出典:D. Chadych & D. Leborgne (1999) Atlas de Paris, Parigramme: 33)、及び今囘の撮影地點 1. Rue Saint-Louis en l'Île (サン・ルイ・アン・リール通り)と Rue Poulletier (プルティエ通り)の角 2. Quai d'Anjou (アンジュー河岸通り)より對岸の Rue des Jardins(ジャルダン [庭] 通り)を望む 3. フィリップ・オギュスト時代、即ち 12 世紀に、城壁の所に建ちたる la tour Barbeau (バルボーの塔)の所在を示せるパリ市の看板
サン・ポール寺院と城壁 最長の遺跡 建物の壁と化せる城壁跡 シャルヽ・マーニュ高校の通用門
4. 現存する中にて最も長きフィリップ・オギュストの城壁。右手はサン・ポール寺院。手前の女子高生らしき子は、電話ボックスの中にてケータイ利用せり 5. 城壁の横は運動場。北側はシャルヽ・マーニュ高校 6. 城壁跡の北側。斯樣に建物と一體化されたり 7. サン・ポール寺院西側、サン・タントワーヌ通りから見たシャルヽ・マーニュ高校の通用門
セヴィニェ通り カフェ・ドーム マレール通りとパヴェ通りの角 キュルテュール二階
8. Rue de Sévigné (セヴィニェ通り)からサン・タントワーヌ通りを望む。正面はサン・ポール寺院 サン・タントワーヌ通りに面せる Dôme (ドーム)てふカフェ 9. Rue Malher (マレール通り:手前)と Rue Pavée (パヴェ通り)の角。三角地帶に建てるは葬儀屋さん? 角の直ぐ北側なる安賣り書店 Culture (キュルテュール)の二階。人文系の本安く竝びたり。この店、サン・ジャックの塔の北側なる有名な Mona Lisait (モナ・リゼ:モナ・リザと「讀んだ(リゼ)」の語呂合はせ)の姉妹店らし
『サムライ』 フラン・ブルジョワの無印良品 ノートル・ダム・デ・ブラン・マントー 國立古文書館
キュルテュールにて賣られし繪本 Les Samuraï (レ・サムライ)裡の日本地圖。大阪は和歌山に、京都は奈良に、廣島は四國に、東京は茨城にあり。此は英國繪本の翻譯のやうなるが、てふことは、英國の子供も誤てる知識を植ゑ付けられたるか 10. Rue des Hospitalières Saint Gervais (オスピタリエール・サン・ジェルヴェ[サン・ジェルヴェ看護修道女]通り)より。角には小洒落た街には必ずある Muji (ミュジ 無印良品)。奧は Marché des Blancs Manteaux (マルシェ・デ・ブラン・マントー 白マント市場) 11. Square de Ch. V, Langlois (Ch. V. ラングロワ公園)から Notre Dame des Blancs Manteaux (ノートル・ダーム・デ・ブラン・マントー[ブラン・マントーのノートル・ダム寺院])を見る。右は、頗る短き Rue de l'abbé Migne (ミーニュ師通り) 12. Rue des Francs Bourgeois (フラン・ブルジョワ[自由市民]通り)に面せる Archives Nationales (アルシーヴ・ナスィオナール 國立古文書館)
ペケ通りの中庭 ランビュトー通り ベルトー袋小路 人形博物館
13. Rue Pecquay (ペケ通り)を一寸這入りたる建物の中庭 14. Rue Rambuteau (ランビュトー通り)を西に望む 15. ランビュトー通りの北側 Impasse Berthaud (ベルトー袋小路) ベルトー袋小路の北側奧には Musée de la Poupée (ミュゼ・ド・ラ・プペ 人形博物館)あり
モール拔け道 カルティエ・ド・ロルロージュ カルティエ・ド・ロルロージュの高層住宅 サン・マルタン通り
16. ポンピドゥ・センター北側、Rue Beaubourg (ボーブール通り)から這入る Passage du Maure (モール[ムーア人]拔け道) 17. Quartier de l'Horloge (カルティエ・ド・ロルロージュ 時計街)。右下にては、若者が警官に取り調べ受けつゝあり。些か劍呑なる界隈なるか 18. カルティエ・ド・ロルロージュ内。建物の下を潛ると Rue B. de Clairvaux (B. ド・クレルヴォー通り) 19. カルティエ・ド・ロルロージュを拔けて Rue Saint Martin (サン・マルタン通り)へ
エティエンヌ・マルセル通り ガチャポン ジャン・サン・プェールの塔 レスカルゴ
20. サン・マルタン通りの角より Rue Étienne Marcel (エティエンヌ・マルセル通り)を西に見渡す。左のバス停にある映畫のポスターは、近日公開「サド」。但し文藝大作 ガチャポン。1F〜10F 迄 21. フィリップ・オギュストの城壁の外なる Jean sans Peur (ジャン・サン・プェール 恐れ知らずのジャン)の塔跡。15 世紀初頭のもの 22. Rue Montorgueil (モントルグェイユ通り)なるエスカルゴ專門店 L'Escargot (レスカルゴ)。巨大な金のでんでん蟲が目印
大股っ子 遊ばれぬ水 木陰の晝寢 水遊びっ子
大股にて歩ける子 水遊びする子をらず 圍ひの取れた廣場。巨木の陰に憩ふ人々 水遊び人現る
 扨、豫定終了なれば、天氣も良し、シャトレ驛より、ポートライナーやニュートラムに似た最新の新交通システムを取るメトロ 14 番線に乘りて、ベルスィー公園に向かふ。平日なれば、てふかヴァカンス中なれば、人少なし。何やら廣く感ずるなと思へば、春よりずっと養生中なりける西側の廣場の圍ひの取れたればなり。暫しの涼を求めて四阿(あずまや)の陰に憩ふ。


2000/08/17
 Aktéon Théâtre にて二本觀ぬ。
 1 本目は、Compagnie L'heure bleue (コンパニー・ルール・ブルー 劇團青い時)の Action de grâses (アクスィオン・ド・グラース 恩寵/魅力の行爲)(作/演出・Marionne BOULEUC マリヨンヌ・ブルーク & Bianca Joy OVALLE ビアンカ・ジョイ・オヴァール & Aude SAINTIER オード・サンティエ)。この作・演出の三人に加へて Hélène GUICHARD (エレーヌ・ギシャール)と Séphora HAYMANN (セフォラ・ハイマン)の計五人芝居なり。
 入場せば、幕前に天使一人坐わりて本讀みたり。軈て開演。天使名前を呼ばれ、何やら試驗の課題とて、人間界へ行き役に立てと云はれ、幕の開くと同時に(この電動幕、モーターの音、頗る五月蠅し)、幕裏に寢轉びたる 3 人の娘達に混じり、芝居開始。扨、3 人の娘達、各々惱みあり。仕事の成功を願ひつゝダイエットに勵む娘、勉學での成功を望む地味娘、幸せな家庭を夢見つゝ繪を描かんとせる娘。彼女らの惱みを次々と描きつゝ、合間に黒盡(づ)くめの男(惡魔か?)チョロチョロし、ギターで歌の伴奏したりし、彼女らに何やら囁(さゝや)いたり、唆(そゝのか)したり、最前列の客席に陣取りて舞臺を眺めたり、娘達の周圍でダンスしたりす。結局上手く行かぬ娘達に、逐に天使、神に向かひて、わたしは彼女らの役には立たぬと訴ふるが、そこで、何をせずとも良い、信頼、愛情、大切なことを自ら悟る。ト、幕唸りを立てつゝ閉ぢ、幕前に天使と男。男、天使に携帶を差し出し、話す彼女。電話を切りたる彼女「わたし……」。こゝんとこ肝腎の臺詞聽き取れず。"Je prise."(ジュ・プリーズ)と聞こえたるが、どう云ふ意味?
幕前の天使 客席 派手っ子と天使っ子 四人娘
客入れ中、本を讀む天使 客席 ダイエットに勵む派手っ子(左)と天使っ子 繪描きっ子(右端)と地味っ子(右から 2 人目)
ギター男 神樣、私は彼女達の役に立ってをりません 初對面の二人 結婚式後の二人
黒づくめのギター男 神に自らの役割を問ひ掛ける天使っ子 初對面の二人。積極的なデルフィーヌ 結婚式後。人氣無い田舎道にて車を待つ二人。「D144」とあるは「縣道 144 號線」てふ標識
子供が出來た二人 怒りのデルフィーヌ 空中信號 ル・カプリコルヌ
子供の寫眞をプリントせる T シャツ着てるデルフィーヌ 激怒せるデルフィーヌ。勢ひ餘りて、お皿を粉碎。舞臺に散らばりたるお皿の破片。これはハプニングならん 劇場よりの歸途。バスティーユ手前 Boulevard Richard Lenoir (リシャール・ルノワール大通り)なる「空中信號」。フランス、普通は、下の信號しか無し 山羊座の看板はレストラン Le Capricorne (ル・カプリコルヌ)。店の前で何故か腕組むをぢさん。向かふに見えるは勿論バスティーユの塔
フラッグ・カフェ バスティーユのメトロ サン・タントワーヌ通りにて サン・ポール通り
バスティーユ廣場と Boulevard Beaumarchais (ボーマルシェ大通り)の角なるカフェ バスティーユのメトロ サン・タントワーヌ通りの流し撮り。親子連れ Rue Saint Paul (サン・ポール通り)
エジナール通りの星 オテル・ド・ヴィル通りの星 マリー橋から
鈎型の路地 Rue Éginhard (エジナール通り)上のお星さま Pont Marie (ポン・マリー マリー橋)北側、Rue de l'Hôtel de Ville (オテル・ド・ヴィル通り)の星 マリー橋よりセーヌ下流を望む。左手はサン・ルイ島。23 時 16 分
 ト、再び幕開き、天使も加はりたる 4 人娘、蝋燭を前に寢そべりて諸々長臺詞、軈て蝋燭吹き消し、舞臺中央ににぢり寄り、「きっと、明日も、世界は續いてゐる」と云ひて、幕。
 『パリスコープ』の粗筋にては 3 人の娘達が「ノイローゼも懼れも知らぬ 4 人目に導かれる」とあれど、他の 3 人を描くのに時間食はれて、天使は積極的に何もせず、惱みを訴へたるのみ(これが彼女の「憂ひ」)。細切れのシーンの積み重ね(暗轉だらけ)は、見てゝツラシ。整理せば面白いと思ふぞ。觀客は 28 人程。70 分。
 2 本目は、Le Onze (ル・オンズ 劇團 11[若しくは、サッカーの「イレヴン」か?])の Love Circus (ラヴ・サーカス)(作/演出・Philippe SOHIER フィリップ・ソイエ)。こちらは Suzanne EYSÉE (スュザンヌ・エリゼ)と Benjamin ALAZRAKI (バンジャマン・アラスラキ)の二人芝居にて、或るカップルの出會ひ、結婚、離婚……寸前で和解を描く。
 Delphine (デルフィーヌ)と Philippe (フィリップ)のソファに坐わりてパスティス (pastis) 呑みつゝ會話せるとこより開始、最初は vous で話したる間柄なるが、デルフィーヌ積極的にて、逐にフィリップと付き合ふことに。次の場にては田舎での結婚式の後、道端にて車を待つ二人、一寸險惡にもなれど、直ぐ仲直り、いづれブルターニュに庭付きの家を買ひて、トマトなんか育てんと話す。續きてデルフィーヌの妊娠判明せる場、子供生まれて、汚れ物洗濯しつゝ不機嫌なるデルフィーヌ。更に、醉っ拂ひて歸宅せるフィリップの昇進せりと聞きて、大喜び、食事に出掛けんと支度すれど、フィリップ寢ちまって、デルフィーヌ激怒。最後は、離婚調停のための裁判所今後につきて語るフィリップ。酒を已(や)め、今の家はデルフィーヌに讓り、自分はブルターニュの家(實家?)に戻るてふ。そのフィリップの態度に、心動かされしデルフィーヌ、で、二人は仲直り。フィリップ、よりを戻すにあたりて、大切な約束ありとて、そは「トイレの扉を開けたまゝ用を足さぬこと」。
 ありがちのストーリーを、ありがちに料理の正統派人情喜劇。勿論、見せ場は役者のみ。でも役者の見せ場無し。トホヽ。お客は 10 人程。70 分。


2000/08/20
 午前中より、M 師と D、A 來サン・ルイ。来年から仕事の忙しくなるゆゑ、毎年のやうにフランスに來ること能はざらんと云ひつゝ、一週間程前に來佛せる M 師は、既にブルターニュの旅を終へて昨日パリに戻りたる由。嘗ての同級生 D と嘗ての後輩 A のカップルも、一週間程前に來佛、パリをウロウロせる由。勿論小生の歡送會以來なれば、一緒にメシでもてふハナシ。
 先づは小生宅に集ひて、そこから出掛けんとの計畫なれど、小生宅に腰を落ち着けるや、話終はらず、結局、4 時前に成りて、漸く出發。
M 師と D V サインの A
ブラサンス古書市の M 師と D メトロのホームにて V サインの A
 古書道樂をしたふした感のある M 師なれど、ブラサンスの古書市はご存じならず。日曜なれば、取り敢へず案内仕る。
 ブラサンスの市、矢張りヴァカンス中にて店の數少なし。加へて、外は生憎(あやにく)の天氣にて、途中よりザヾ降りとなり、屋根の境目の本屋さん、間より雨水蕩々と落ち來たれば、周章てゝヴィニール・シートやブルー・シートを掛けたりせり。夫(そ)れが爲、見られぬ部分も多々在り。
 一通り見たる後、先週とは逆ルートを辿りて、サン・トゥーアンの巨大古書店に向かふ。
 途中 PC3 のバスに一瞬乘りたりしつゝ、蚤の市に到れば、雨で人のゐなくなりし地べたに、雨上がるや、忽ち店を開きたる人々あり。その中を通りて、巨大古書店(店名は Librairie de l'avenue リブレリ・ド・ラヴニュー 通りの本屋)に行きて見れば、何と、日本の雜誌の切り拔き飾られぬ。この書店の紹介なり。恐るべし日本の雜誌。こんなとこ迄紹介せるとは。
 こゝは、先に述べたる如く、貴重・豪華本コーナーのあるところなれば、M 師はどうするか知らんと思ひたれど、案に相違して近寄りもせず。師の曰く、俺はもう脚を洗ったから、近寄らない。這入れば必ずや買ってしまふからださうなり。
 その後、クリニャンクール迄歩き、メトロ 4 番線にてオデオンへ出で、Marché Saint Germain (サン・ジェルマン市場)近邊のイタメシ屋に入りて、escalope pané (エスカロップ・パネ 牛カツの如きもの)を食す。ウマかりき。






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