★2000/07/31 『ル・モンド』に日替はりにて付いてくる別冊特集の一つなる Le Monde interactif (ル・モンド・アンテラクティフ)はニューメディア關係の話題を扱ふものなるが、前日のは、Sur la piste du @ dans la Venise du XVIe siecle (スュル・ラ・ピスト・デュ・@・ダン・ラ・ヴニーズ・デュ・セズィエーム・スィエークル 16 世紀のヴェネチアに@の痕跡)てふ記事載せたり。
此は、ローマの研究者が、16 世紀の商人の書翰裡に、「@」の先祖を發見せりてふものにて、イタリアのニュース・サイト la Repubblica.it 報じ、。寫眞載せたり。成程、@なり。
抑々讀み方からして判然せぬこのマーク、米國發の at の他、イタリアでは chiocciola (キョッチョーラ)、スペインにては abora (アロバ)、こゝフランスにては arobase (アロバズ)、他にも「猫の尻尾」「猿の尻尾」等々、數多の呼稱を有したるが、その起源につきては、未だ闇の中なり。
這般(しゃはん)の消息をマクラに、電腦用語の歴史と現在の用法を解説せる Alain Le Diberder (アラン・ル=ディベルデール)の本 Histoire d'@ -- L'abécédaire du cyber-- (イストワール・ダロバズ――ラベセデール・デュ・スィベール―― @の歴史――サイバー用語の ABC――)[2000/04, La Découverte, Paris] によれば、中世の書字生(テクストの書寫のプロ)あたりが、ラテン語の ad (アド=現在のフランス語にて à、即ち at の意)を符號化したるが初めならんとの假説を呈せり。
扨(さて)、フランス語の arobase はスペイン語の aroba に由來せるが、これはアラビア語由來の重さの單位にて、凡そ 12.8kg を示せり。スペインにて@を aroba の代はりに用ゐたるは、16 世紀なりと云ふ。前出の寫眞の@は、明らかにこの重さの單位なれば(兩取手付壺 amphora アンフォラ 一つ分)、上記の@は些(ち)っとも祖先に非ず。既にズレちゃった時代の用例なり。結句、それ以前の物的證據ない以上、決定的事實は不明のまゝならん。
オマケ:上記の『@の歴史』の Mail の項目では、今に "Tu n'a qu'à me l'envoyer par le mail" (テュ・ナ・カ・ム・ランヴォワイエ・パル・ル・メール そいつをメールで送ってくれりゃいゝよ)てふ代はりに "Tu n'a qu'à me le mailer" (テュ・ナ・カ・ム・ル・メイルレ そいつをメールしてくれりゃいゝよ) てふやうにならん、と書かれたり。