黒猫亭舊館
黒猫亭主人謹製藏書録・贅言他
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2009.03.31(Mar)23:32  ブログ移行
 かねてからの計画であったブログ・ソフトの変更を、他のサイト――仏文のと支援機構の――への導入を期におこなひました。
 てなわけで、こゝは「黒猫亭舊館」に。新しいところは http://chat--noir.com/j/ ――じつは、URLには変化なし――。
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2009.03.30(Lun)23:06  Bon anniversaire, Papa !!
IMG_0259.JPG 392×522 69K 3/30は、我が父・秀治氏の誕生日である。彼は昭和4年生まれなので、本日で傘寿を迎へられたことになる――つまり、中塚圭骸式にいふと、今年は「昭和84年」なのだ――。大阪讀賣の演劇担当記者だった氏は、13代目の松嶋屋とも親しかったが、もちろんのことながら、当代の15代目仁左衛門とも親しく、かつて入院してゐたをりにも、お花を届けてもらってゐた。小生は、見舞ひに行ったとき、その花籠を見せてもらったが、ちゃんと「仁左衛門」の名入りである。尤も、おなじ花籠を見た看護師さんは、にこやかに、かうノタマッタといふ:「まあ、よかったですねえ、綺麗なお花、ジンザエモンさんからの!」

(仁左衛門さんから届いた傘寿祝ひの洋蘭。我が母・玲子さん撮す)
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2009.03.29(Dim)07:03  ミュリエル・バルベリ『優雅なハリネズミ』[河村真紀子](早川書房)
優雅なハリネズミ 昨年出版と同時に購入、かつ読了ずみの本。日本贔屓で、去年から京都に暮らしはじめた Muriel Barbery の 2006年の話題作――2007年度 Prix des Libraires(本屋さん賞)受賞作。映画化もされるやうだ―― L'Élégance du hérisson [レレガンス・デュ・エリッソン] ――「ハリネズミの優雅さ」が直訳――の翻訳。2000年に「最優秀料理小説賞」を受賞した前作 Une groumandise [ユヌ・グルマンディーズ](食道楽)――邦訳は『至福の味』――と同じパリの「グルネル通り7番地」(7 rue de Grenelle)――Google ストリートビューでも判るやうに、サンジェルマン・デ・プレ近辺のこのあたりはブティック街でもある。一階にプラダが店を構へてゐるぞ――の高級アパルトマンの管理人のをばちゃん Renée [ルネ] が一方の主人公である――ただし、前作と設定や名前は同じでも、別人格っぽい――。猫の名前を、トルストイの『アンナ・カレーニナ』から「レオン」と名付けるほどの読書家で、小津安二郎の映画を初めとした日本モノの贔屓でもあるが、そのことは「無学な管理人」の仮面の下に慎重に隠してゐる。
 もう一方の主人公は、このアパルトマンに住む12歳の女の子 Paloma [パロマ]。たいへん成績優秀であり、谷口ジローの漫画に人生を学ぶ日本愛好家である――『ヒカルの碁』で得た囲碁についての知識を開陳する場面もある――。『世界はまわる』(Journal du mouvement du monde [世界の動きの日記])『わたしは想う』(Pensée profonde [深い思索]) てふ日記をつけてゐる彼女は、世の中に倦んでゐて、13歳の誕生日に自殺することを計画してゐた。
 このふたりによる断章が交互に語られるなか、亡くなった高名な料理評論家アルサン氏――前作の主人公だった――の後に日本人オヅ氏――オヅ・カクロウ。漢字表記は不明だが、小津安二郎のとほい親戚てふことになってゐる――が転居してきたことから、ふたりの日常に大いなる変化が訪れ……てふオハナシ。
 ちなみに、訳者あとがきで、河村真紀子――大阪外大仏語科出の翻訳家だ――は、著者と相談のうへ、「日本についての表現などについて原書の内容を一部変更した」と断ってゐるのだが、この点について、おそらくひとつはこゝであらうてえのが、深い趣味を隠してゐさうな管理人に興味をいだいたオヅ氏の、ルネを自宅の食事に招待する場面。オヅ氏は、アントレとして「ギョウザ」を出し、その後「ざるそば」を出す。「ふつうはギョウザの後に出したりしないのですが、両方とも僕の大好物でしてね。是非とも食べてみていただきたいと思ったのです」(pp.250-251)とエクスキューズつきだが、じつは、このセリフは原書には存在しない。原書では、「ざるそば」ではなく " zaru ramen" なのだ(原書, p.243)。なるほど、ラーメンにギョウザは付きもの、なんの注釈も要るまい。「ざるラーメン」は「つけ麺」のことであらうが、絵に描いたやうな紳士のオヅ氏がふるまってくれるとなると、オワラヒの域に突入してしまふので、「ざるそば」に変更されたに相違ない。しかし、ことほどさやうに、「ラーメン」は代表的日本食のイメージを獲得してゐるのだといへよう。
 物語のラストは、開放感にあふれつゝも、些かショッキングかもしれない。尤も、斯様にして、ルネはパロマを救ひ得たのだ。
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2009.03.29(Dim)06:45  森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(角川文庫)、万城目学『鴨川ホルモー』(角川文庫)
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)鴨川ホルモー (角川文庫) いづれも昨今話題であり――ともに漫画化されてゐるほか、前者は舞台化、後者は映画化そして舞台化も――、いづれも京大――農学部と法学部――出身の作家が、京大を舞台とし、いづれも人外のキャラ――古書の神様やらとオニ――の出てくる「奇妙な味」の小説であり、ライトな恋愛小説として読める点も共通だ。そして、森見作品は、「詭弁論部」「映画サークルみそぎ」とか、さらには樋口くんと羽貫さん――先行作品『四畳半神話大系』の登場人物と同一か?――など、他作品との意図的リンクが見られるが、万城目(まきめ)作品も、京都のつぎは奈良、そして大阪と、舞台を変へつゝ、伏見稲荷の料亭「狐のは」とか、「大阪女学館高校」とかにリンクが見られる。だが、京都を舞台の中心としつゞける森見作品は、その文体も内向的であるのにたいして、舞台も移動しつゞける万城目作品の文体は、作者本人がテンポ良くと云ふてゐるとほり、外向的文体で、そのあたりがテイストのちがひとなってあらはれてゐる。
 『夜は短し』の文庫の解説は、羽海野チカがイラストで描いてゐるのだが、「鯉を背たらふた黒髪の乙女」他のイメージがハマりすぎではあるまいか。とりわけ「詭弁踊り」を踊る爺様たちの姿萌え!
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2009.03.29(Dim)06:44  東村アキコ『海月姫』1(講談社コミックKiss)
海月姫 1 (1) (講談社コミックスキス) 「ごっちゃん」てふ4歳児との生活を描く実録漫画『ママはテンパリスト』を『コーラス』に連載中の「美人人妻漫画家」東村アキコ。今年になって離婚したやうで吃驚。
 レトロな下宿「天水館(あまみずかん)」の腐女子でニート――Not currently engaged in Employment, Education or Training で、年齢的には15〜34歳の者――の間に暮らす、イラストレータ志望で上京した海月(くらげ)大好きの倉下月海――もちろん「クラシタ・ツキミ」と読む――18歳。他の住人は、天水館の大家の娘で着物・人形オタクの千絵子、三国志オタクで「ぬを!」が口癖のまやや、鉄道マニアのばんば、執事好みフケ専のジジ、唯一正業(?)をもつ売れっ子BL漫画家の目白樹音――ただし、対人恐怖症で夜行性のため、姿を見せることがない――で、通称「尼〜ず」。オシャレなものを不倶戴天の敵とする30オーヴァーの歳上ばかりだ。そんなひとびとの間で、しかしながら愉快に暮らしてゐた月海は、ある日、クラゲを助けようとして、ひとりの美少女と知り合ひになるが、その実態は、政界に這入りたくないがために女装してゐる大物政治家の次男坊・鯉淵蔵之介であった。しかも、月海は、ファッションとメイクに造詣の深い蔵之介の気まぐれで、美少女に変身させられてしまふが、その姿に、蔵之介の兄――異母兄か?――修(しゅう)が一目惚れして……てな感じで、月海と蔵之介のダブル視点から描かれる教養小説(ビルドゥングスロマン)風漫画である。あとがき漫画によると、海月好きは、作者本人のことだったらしい。
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2009.03.29(Dim)06:44  佐々木倫子『チャンネルはそのまま!――HHTV北海道★テレビ 』1(小学館 BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
チャンネルはそのまま! 1―HHTV北海道★テレビ (1) (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) とんでもない入社試験結果にも拘らず、「バカ枠」で北海道★(ほし)テレビの報道記者に採用された雪丸花子。なぜ「バカ枠」があるかは、漫画をお読みあれ。
 「ふりまはす女子&ふりまはされる男子」の構図が基本の佐々木倫子作品は、「ぼーっとした男子」が主人公――『代名詞の迷宮』『ペパミント・スパイ』『動物のお医者さん』『Heaven ?』など――と、「おっちょこちょいの女子」が主人公――『林檎でダイエット』『おたんこナース』など――の2系列があるが、本作はもちろん後者の系列。したがって、「業界モノ」である点もふくめ、テイスト的には『おたんこナース』と同じだ。
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2009.03.29(Dim)06:06  古屋兎丸『幻覚ピカソ』1(集英社ジャンプ・コミックス)
幻覚ピカソ 1 (1) (ジャンプコミックス) 月刊誌の『ジャンプ・スクエア』連載。兎丸ブログによると、当初8話の予定が、延長されるやうだ。『ライチ☆光クラブ』風の繊細なタッチで描かれてゐるが、じつは漫画の描きすぎで、腕を痛めてしまひ、力を抜いて描いてゐるためらしい。
 見た目は華奢な可愛い男子高校生――下睫がある――にして、ダ・ヴィンチを崇拝する絵の上手な、けれどクラスでは浮いた存在の葉村ヒカリことピカソが、事故をきっかけとして、人の心のなかを絵に描けるやうになり、その絵に這入り込むことで、人助けをしてゆくてふオハナシ。
 彼のことを、クラスで唯一気に懸けてゐた――惚れてゐるやうな、オモシロがってゐるやうな――美少女・山本千晶と河原にゐたところ、ヘリコプターが墜落、千晶は死んでしまふが、彼女は、その後、ピカソの制服の胸ポケットから、天使のやうな羽根をはやした姿の小美人として現はれ――内田春菊の『南くんの恋人』の逆ヴァージョンのやうな感じ――、ピカソに人助けをせよと命じる。じつは、事故のときにピカソも死んでゐたのだが、千晶が神様や仏様に必死に祈ったけっか、人助けをすることで生き続けられることになってゐたのだ。しばらく人助けをしないとピカソの腕が腐ってくるのは、「本来は死体」だからであった。
 兎丸ならではの絵画技量を土台にした作品。ピカソが描く「心のなか」の絵は、じっさいにスケッチ・ブックに鉛筆で描いてゐるらしいぞ。
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2009.03.28(Sam)00:34  後期日程手続とキャンプ2009勧誘後編
P1030440.jpg 800×600 110K 3/27は後期日程合格者の手続日。例によって、後期合格者たちにチィらがキャンプの勧誘をおこなふ。今回は、前回不参加のダイもくはへて、総勢7名。だが、後期合格者は前期の1/3のうへ、出足が遅く、前期のときのやうに、天手古舞ひにはならぬのであった。

(右端は、教育促進支援機構初スタッフのサヤカ)
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2009.03.28(Sam)04:27  紺條夏生『妄想少女オタク系』5(双葉社アクションコミックス)
妄想少女オタク系 5 (5) (アクションコミックス) ミキマキの『アリーナ!』とおなじ『コミックハイ!』に連載されてゐる「メタBL漫画」の本作、ミキマキのメタBL漫画である『少年よ耽美を描け』――こちらは、新書館の『ウンポコ』に連載。通称「耽美シャス」――の漫画中BL漫画「わんぱくなボクら☆」――通称「わんボク」――が、作中に登場してゐるぞ。
 念願のサイトもつくった浅井さんと松井さん――サイト名は「アサマツ」――、腐女子活動は順調だが、阿部くんとの方はさっぱり。前巻からのキー・パースン百瀬さんの存在がますます大きくなったところで、以下次巻。
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2009.03.27(Ven)04:57  中村光『聖☆おにいさん』3(講談社モーニングKC)
聖☆おにいさん 3 (3) (モーニングKC) これまた、今年の「手塚治虫文化賞」ノミネート作品、売れに売れてる中村光――福岡でのサイン会整理券も、一瞬でハケたらしい――の最新刊。イエスとブッダの長期ヴァカンスの、夏から冬までを描く。今巻は、四大天使――ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエル――や梵天てふ、天界からのキャラも大活躍だ。
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