矢作 俊彦+司城 志朗『犬なら普通のこと』(早川書房)

By 黒猫亭主人, 2010/01/04

犬なら普通のこと (ハヤカワ・ミステリワールド) これまた贔屓の矢作俊彦が、やはりエンタテイメント系作家の司城志朗と組んだ最新作。昨年6月から10月にかけて『ミステリマガジン』に連載されたものの単行本化である。

『暗闇にノーサイド』『ブロードウェイの戦車』『海から来たサムライ』以来、25年ぶりのコンビ復活ださうだが、『海から来たたサムライ』は、2007年6月に『サムライ・ノングラータ』として改稿・改題されたのが出てゐるし、2008年7月に「溝呂木省吾」てふ胡散臭い名義で出された『半島回収』は、じつは「矢作+司城」だったらしいので、正確には「表だって矢作+司城名義で出された、まったくの新作」が25年ぶりてふことである。

舞台は現代の沖縄。米軍兵と日本女性とのあひだに生まれた金城喜実(きんじょう・よしみ)は、東京に出てヤクザになったが、40を過ぎて沖縄に戻ってきていまの組の世話になった。それから8年、それなりの地位は得たものの、相変はらず中途半端な極道であったが、借金のかさんだことから、パシリに使ってゐる彬とともに、ある作戦をたてる。組の金が集められるときを狙って強奪しようといふのだ。だが、コトは彼の描いた絵図どほりすすまず、軈(やが)て、組全体を巻き込んだ騒動に展開してゆく。だが、その背後には、意外な黒幕が……。

派手にドンパチが繰り広げられるのは、往年どほり。めづらしいクルマも出てくる。ヨシミの女房の「幸せなんてへっちゃらだ」てふせつなさもよい。しかし、恰好よい別嬪さん役が、最後はヘタレになっちゃったのは残念。

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