小生贔屓のトジツキハジメ。ほゞ一年前にでた『徒然』は、同人誌掲載作をまとめたもの。BL漫画家の相良直樹は、元ロッカーでいまは巨乳好きのエロ漫画家・恩田寛斗のもとでアシスタントをつとめること5年。そのテクニックと料理他の家事の腕で重宝されながら、じつは彼は、ノンケの恩田に恋ひしてをり、そのことはオープンにしてゐるものゝ、恩田は靡くそぶりをみせない。途中で、助っ人アシスタントに派遣されてくる栗本鹿野子や、恩田の昔のバンド仲間――有栖川と摂津。ふたりはゲイ・カップル――がくははっての、だらだらした日常を描く「徒然シリーズ」。作者みづから「はんなりBL」といふだけあって、すてきなのんびり度である。2篇おまけつき。
『俺と彼女と先生の話』は非BL。高橋謙清(けんしん)は、じつは茶道家の生まれ。かつては神童と囃された彼も、いまぢゃただのフリーター。女子高生めあてに女子校前のコンビニでバイトする日々だ。ある日、祖母からの依頼で、民俗学者の鈴木先生の家での茶事に参加することになるが、それを知った女子高生に「余計なことに首突っ込むと早死にするよ」ト殴られる。鈴木先生を蛇蝎の如く忌み嫌ふ女子高生の佐藤小町は、そのじつ鈴木先生の姪で、かつては親ってゐたのだが、先生が小町の母親、すなはちじぶんの姉の死にさいして、その魂をこの世にひきとめ、復活をもくろんだことから嫌ってゐるのだが、高橋には「ツンデレ」と見ぬかれてゐる。最後は、その魂を巡っての冒険譚に。作者の「怪異好き」が遺憾なく発揮された連作。コンビニのバイト仲間・田中君のエピソードつき。