ビッチとそれにふりまはされる男子を描いた『サユリ1号』、小劇場演劇を舞台とした『CUE』など、繊細なアドレッサンスたちを描いた小生贔屓の漫画家村上かつら。昨年6月に刊行されてたのを全然知らず。f(^ー^;
今作は、一転して、内向的な小学生男子・祐太が主人公。ある日、押し入れのなかで、古びた犬型ロボットを発見するが、そのロボット「ラッキー」は、彼の死んだ母親が可愛がってゐたロボットであり、その記憶を宿してゐた。かくして、祐太とラッキーの日々がはじまる。
典型的な少年の Bildungsroman(成長譚)であるが、ラッキーの眼の部分は――アイボの如く――スクリーンになってゐるが、そこには5文字しか表示できないにもかかはらずそれで充分てふことや、祐太と暮らすうち母親の記憶が置きかへられてゆくこと、父親に新しい大切な人が生まれるが、祐太はそれを積極的に受け入れるなど、独自のポイントがみられる。そして、むくむくの子犬型であるラッキーの造形が――眼がスクリーンにもかかはらず――愛らしいのだ。
なほ、ラッキーが旧型のロボットであり、バッテリーには換へがなく、さらにそのバッテリーが劣化してゐることが最初の方でしめされてをり、結末の予想は容易につく。そんなバッテリーの形式の問題なんて、新テクノロジーでなんとでも解決でけるてふツッコミは有効なのだが、まあ、さういはずにシミジミしておいてはどうか。
最新式の犬型ロボットくん――喋れる――がイイ味だしてます。