クラシック・バレー一筋だった貴和子は、人生に迷へるお年頃。ある日、ひょんなことから、ベランダで隣人とことばをかはし興味を持つが、それはじつはバイト先のダイニング・バーの常連さんの縫原であった。
BL要素皆無の「ピュア・ラブストーリー」。ちなみに、この縫原先生、専門はドイツ文学だが、独文学要素も皆無である。だが、バレー要素は充実してをり、とりわけ「楽しくってずっと止まってゐたい」てふことばはキー・ワードになってゐる。そして、「男の人に上から見られるのとか 乱暴な感じがダメなんだもん」といふ貴和子の吐露には、大層共感できる。
帯には「28歳処女と52歳大学教授の恋」とあり、「三浦しをん推薦!」である。ところが、あとがき――ふつうに本の最後にある――では、三浦しをんの「現実に若い女とつき合う男は精神的に未熟な男」――縫原先生は周囲では人気だったらしく、「でも二次元だと萌え」ださうで。枯れ専?――てふ意見を紹介して、目からウロコだったさうだが、迂闊なり三浦・ヤマシタ。いくつになったかて、精神的に未熟やない人間なぞ、をれしまへんがな。
にしても、甲野先生にしあはせはおとづれるのか?