〆切やら指導論文読みやらじぶんの登場シーン書きやらなんやら、わけのわからん状態のまゝ、国際救助隊にはあらねど、サンダーバード上のひととなり、一路湖西線から、武生、マイミクのまぁきさんが骨休めに行ってきたばかりの芦原温泉――じつは、母方の Papy のお墓があるにもかかはらず、まったく参りに行ってない場所でもあるのだが――を横目に見ながらとほりすぎ、2時間半ばかりで古都・金沢へ。S先生が呼んでくだすった集中講義のためである。
けっきょく、授業用のプリントまにあはず、モバイル・プリンタ持参となったバタバタぶりだが、なんとか金大の緑あふれる――この大学は、山のうへの広大な敷地に移転してゐるのだ――ゲストハウスに投宿。ビジネスホテル風であるが、なかなか広くて快適だ。
S先生の車で送っていただき、しばし街を散策。流石は加賀百万石の城下町、見るべきものもたいさうあるが、日程的に、もはやうろつく時間もとれないので、ピンポイントでまはる。夜は、S先生が歓迎の席を設けてくださり、仏語のW先生、中国語のO先生といっしょに、O先生も太鼓判の、中華料理屋らしからぬ中華料理――S先生曰く「金沢料理」ださうな――をご馳走になる。席上、W先生は、小生がとんとご無沙汰の Flench Bloom Net のライターのおひとりだったとか、O先生は、市大中文のS老師の大学の同級生だとかが判明したりするのだった。
そして、まだ準備は終はらない……。
先生、お元気でしょうか。再び投稿させていただきます。最近遭遇した仏文について伺ってよろしいでしょうか?
『ふらんす』2008年10月号に駐日フランス大使の仏文メッセージが寄せられております。その冒頭、
> Quel grand honneur que de pouvoir participer à la revue Furansu.
とあるのですが、honneur のあとにくる、なくてもよさそうな que は同格らしいのです。確かに、辞書には同格の que というのが載っているのですが、私の持っている文法書には、que のそんな用法は記載されていないのです。
この用法が載っている文法書というのはありますでしょうか? そして、そもそもこの引用仏文において、que は必要なのでしょうか?
Raton Laveur さん、はじめまして。福島さんが集中講義出講先でご多忙のようなので、たのまれてもいないのに(!)横レスします。
おたずねの que は、”Qu’est-ce que c’est que ça ?” というときの ça のまえの que、”C’est une belle fleur que la rose.” というときの la rose のまえの que とおなじ種類の que で、ときに「虚辞的接続詞」といわれるものです。文法書ではあまりきちんと位置づけられておらず、朝倉季雄『新フランス文法事典』では、445ページに、わずかに “Qu’est-ce que c’est que la vérité ?” の例を「俗語的」とするのみです。『小学館ロベール仏和大辞典』1999ページでは、”C’est à vous que je parle.” のような強調構文と同類にしておりますので、que 以下が文のかたちになっていなくても、C’est+属詞のあとで que… の部分が前提を提示するという意味での拡張使用であるととらえているようです。
わたしの個人的な考えでは、さきだつ判断の主題をとりたてて示す機能があると思います。その意味では『小学館ロベール』的に(つまり、強調構文の後段として)理解してもよいでしょうが、日本語でも、「バラは美しい花だ」というかわりに、「バラというのは美しい花だ」/「美しい花だ、バラというのは」などのように、「というのは」を入れることがありますね。主題をあらためて言いなおす感覚があるので、「言う対象を示す」という点では、実は間接話法の補足節をみちびく que… とも関係があるのではないかと考えております。
なお、引用なさった文では、おっしゃるとおり、que はあってもなくてもかまいませんね。
わたなべ先生、お返事ありがとうございます。
ご説明拝読いたしました。文法書での位置づけもはっきりしていないのですね。
かの有名な Grevisse の Le bon usage なら説明があるのかもしれませんが、私にはあれを読みこなすほどの仏語力はありません(汗)。
いずれにせよ、この同格の que、触らぬ神に祟りなしといった印象を受けました。怖い怖い。
フランス大使もこういう日本人には意外な用法を使ってしまうあたり、人が悪いですねぇ。
Raton Laveur さん、
念のため Grevisse (わたしがもっているのは1993年の第13版です)で探してみましたが、すくなくとも関係詞としての que の個所では、問題の用法は扱われていませんでした。
文法書でこの構文を扱っているのは、Le Bidois や von Wartburg et Zumthor あたりですが、いずれもあまり詳しくはありません。
さきほどは書きませんでしたが、実は論文ならこのテーマをピンポイントで扱ったものがあります。つぎのものです。
Cl. D. Le Flem (1993) : “C’est un os que ce QUE-là ! une présentative énigmatique”, Travaux de linguistique, 27, pp.65-80.
お気づきのように、この論文はあそびごころで、題名にもおなじ構文を使っています。日本語で言えば、「この que っていうのが味噌だよ」とでもいう感じですね。
論文の内容について書くと長くなりすぎてしまいますので、興味がおありでしたらぜひお読みください。
わたなべ先生、再度お返事、そして有益な情報ありがとうございます。
Travaux de linguistique の 27 号は、オンラインでは読めないようですね。国会図書館にも所蔵がないようで……。
いずれにせよ、仏語圏の文法書でもあまり取り扱われておらず、学術論文にまであたらないといけないということは、、外国人学習者としてはそれほど気にしなくてもいいのかもしれないと思いました(言い訳)。
しかし、その割には出現頻度の高い部類に入る用法のような気もしますが。