大阪市立大学インターネット講座 2001

《意味》の生まれる場所
――言語理解システムの探究――



第3回



1. コミュニケーション・モデル

 「コミュニケーション」についての定義は、無数にあります。たとえば、見田・他編 (1994) によれば、「コミュニケーション」にかんする学問的定義は 100 近いそうです。インターネットの検索エンジンで調べても、数多の例が引っ掛かってきます。
Google
kensaku.org
 ここでは、一つの例として、メーリングでも流れていた『広辞苑』の定義を引いてみましょう。

コミュニケーション【communication】 社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達。言語・文字その他視覚・聴覚に訴える各種のものを媒介とする。
 つまり「何やらが伝わること」というわけです。そこで、次のような「コミュニケーション・モデル」が考えられます。

(2) コミュニケーション・モデル A

小泉のモデル

(小泉 1995: 157)

 このモデルは、何らかの「メッセージ」が「発信者」により「エンコード(コード化)」され、それが「受信者」により「デコード(解読)」されることを示しています。
 多くの方が、このモデルに首肯なさるのではないでしょうか。たしかに、communication の語源は、ラテン語の communicare(コムニカーレ) という動詞に遡りますが、これは com + municus で、「荷物を共に分け合う」というのが原義であろうとされています(1)。つまり、「共有」です。そこから直ちに「伝達・報知」という意味が現れていますから、最終的に「メッセージを共有」する(2)のモデルは、この点で「正しい」と云えましょう。


【注】
  1. 元の形は communis(コムーニス) 。ただし、「荷物を分け合う」という意味で用いられた用例は発見されておらず、すでに「共通」という意味で用いられているという(Dubois & alii 1973)。

【参考文献】
小泉  保 (1995)『言語学とコミュニケーション』大学書林.
見田 宗介・栗原  彬・田中 義久 編 (1994)『社会学事典』縮刷版,弘文堂,1988.
Dubois, J. & alii (1973) Dictionnaire de linguistique, Larousse.

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